君と過ごした3カ月
□第1週
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忍術学園へと向かう山の麓にある豆腐屋。
「こんな所あったんだな。」
「看板出してないから分かりづらいんですよ。」
本当に麓にあった名もないその店は、寂しげな印象とは裏腹に混雑していた。
「久々知君、ご無沙汰だな!新しい献立あるよ!!」
「ご無沙汰してます。じゃあ、それ3つ。」
豆腐じゃ力付かないんじゃ…と思うが、旅人のような風貌の人や商人、技術者、色々な人が賑やかに食事をしている。
「後ろの人、もう少し待ってて!今、席いっぱいで…」
「構いません。」
ギリギリ席につけて、ご機嫌な兵助君と苦笑を浮かべる潮江君。
「お先にお1つ、もう2つは待っててね。」
しばらく兵助君の豆腐話を右から左に流していると、先程の店のご主人みたいな人が兵助君の前に膳を置いた。
「先に食って良いぞ。」
「兵助君、どうぞ。」
「ありがとうございます。いただきます。」
あんかけ豆腐を一口食べた兵助君を見て、
潮江君がこそっと「しばらくは静かになったな」って耳打ちしながら笑う。
ガタンッ
急に大きな音を立てて、立ち上がった兵助君と、
「お待たせしました。あんかけ定食です。」
と声をかけられたらのはほぼ同時。
「……名無しさん。」
「え!?」
「は!?!?」
「名無しさん、会いたかった!!」
兵助君が抱き付いた配膳の女性は1番会いたかった人だった。