君と過ごした3カ月
□第6週
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「あ……た、立花君…」
「とにかく早く着替えなさい。風邪をひく。」
今までにない困惑した表情を浮かべる彼女を一瞥して、はぁ…と溜め息をひとつ。
どうしてこうなるんだ…
どうも私は厳禁と呼ばれるアレといい、水分にはとことん嫌われてるらしい。
無論、私も嫌いだ。
「3分あれば足りるな?外に出ているよ。」
そう言ってその部屋を出た。
6畳もない暗い部屋。
真ん中には布団が一組。
わざわざ金を出して初めて入ったよ。
連れ込み宿。
「…偶然が重なるにしても狙ってるとしか思えん。」
閉めた戸の前で恨み言をこぼさなければやっていけない。
迎えに行ったら雨、
その中、前後から山賊が来て、
走って逃げたら名無しさんが滑って着物は泥まみれ、
とにかく雨宿りをしたらそこは連れ込み宿の敷居をすでに跨いでおり、。
こういう宿の経営にありがちな強面の店主に利用者と見なされる。
狙ってやったとしか思えないだろう。
この状況よりも互いの精神環境が危ない。
名無しさんがここに来てから、2人になるのは初めて。
まともな会話などしていなかった。
「立花君も着替える?」
それを合図に私は部屋へと入った。