君と過ごした3カ月
□第6週
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無言の帰り道、雨もやんでぬかるんだ所をただ歩いた。
学園へと着き、名無しさんを部屋へと送る。
5年い組長屋の前に着たのと、扉が開いたのはほぼ同時。
「名無しさん…遅かったね。おかえり。」
「兵助君…ただいま。」
待ってたかのように出てきた久々知は私を一瞥し、名無しさんを抱き締めた。
「明日も早いでしょ?
先にお風呂に行っておいで。」
久々知には珍しく気の利いた台詞と一緒に寝間着を渡す。
「ありがとう、兵助君。
あと…」
名無しさんは笑って受け取って、私をチラリと見た。
「何だ?」
「ううん。ありがとう、仙蔵君。また明日ね。」
綺麗な顔で笑って。
「私こそ感謝している。
迷惑かけたな。早く風呂へと行きなさい。」
「行ってきます。兵助君、私の荷物におから入ってるから!」
パタパタと風呂へと向かう背中を見送っていると、
「あんなに立花先輩臭つけて、なんのおつもりですか?」
「鼻が良いな。」
「先輩方は火薬なり汗なり土なり古書なり…分かりやすいですから。」
久々知は表情ひとつ変えずにそう言った。
5年の中でも久々知は異質だな。
何を考えているやら。