時が奏でし空色の羽

□前奏曲「――――――」
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―――風はどこへ消えて行く
   行方も知らぬ時の旋律を
   私は唯、歌っている
   
   唯……

   道に迷いし羽が行き先を知るまで――― 
   


心地よい風が、吹き抜けていく。


そしてその中で、美しい旋律の歌を歌う少女がいた。


とある中国の山奥、あまり人気のない森の奥に。
少女は孤児院で暮らしていた。





髪を撫でて行く風が心地いい。




つかの間。

珍しく、ドアがノックされた。

「鈴ちゃん?」
開かれたドアから、小柄な女性が顔をのぞかせた。

「…院長さ…どうかしたんですか?」

院長さんは珍しく、困ったように沈黙した。






「実はね、あなた宛てに、荷物が届いたの。」









「はぃ?」


「だから、あなた宛てに荷物が」
「いや、それはわかったんですけど、誰から…?」




「それが分からないの」






荷物をとりに行くまでの道のり、少女は考え耽っていた。



手短に言えば、彼女に荷物を贈る人なんて誰も思い当たらないからだ。


以前この孤児院にいた孤児はすべて、この少女を嫌い、別の孤児院に転院していった。


それに。


少女には、8年前以前の記憶がなかった。

だから―――












そこにあったのは、想像していたものとは全く違うものだった。


あったのは、細長い荷物。




宛名の書かれたタグには、確かにはっきりと“鈴香 様”と書かれている。




が。


「贈り主の名前がない……?」
 

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