Promise YOU
□Promise YOU U
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―9階でございます…
エレベーターの無感情な声を背に目的の病室に向かった。
9階にある病室はすべて個室である。
そのため、優先的に治療しなければならない患者も多い。患者に優先も後回しもないはずなのに、それが起こっている現実は悲しいものだ。
「905号室、マリー・パーファシー…。
あった!!」
今回の患者であるマリーの部屋を見つけ扉の前に立つ。
ノックしようと手を構える…が、書類に書いてあった言葉が甦った。
「…記憶障害アリ」
風が吹いたら攫われてしまいそうな声でつぶやいた。
―自分の知らないマリーかもしれない。けど、もし自分の知るマリーだったら…。
と一人で考えていたときだった。
「誰だ」
突然、後ろから声をかけられ振り返る。
そこには長い銀髪をたくわえ、目に包帯を巻いた女性がいた。手には白い杖が握られている。
「あっ、アレルヤ・ハプティズムです!!!」
「…医者が院内で大声を出してどうする」
「あっ…、スミマセン」
反射で大声で応えてしまい、目の前の…しかも初対面の女性に叱られるとは…。
弟が見ていたら、さぞかし馬鹿にされただろう。
「…それより、退いてくれないか?」
「えっ?」
「病室に戻りたいのだが」
「あっ、ごめんね…。
…もしかして君、マリー・パーファシーさん?」
恐る恐る聞くと、マリーは縦に首を振った。
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