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□Marmaid Tear《中編》
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「はぁ…」

小さな溜息を零す。
あの嵐の日から一ヶ月ほどが過ぎた。
なのに、あの日、瞳に映った彼の顔が鮮明に残っている。

夕日を連想させる緋色の短い髪、澄んだ翡翠の瞳。

思い出せば出すたびに、胸は締め付けられ、彼に囚われた。

「どうしたらいいのかな…」
「大人しくしてればいいと思うよ〜」
「アニス!!」

急に後ろから話し掛けられ、体を震わせた。

「まったく…、探したんだよ〜。
てか、沈没船が秘密基地のお姫様なんてどこにいるのよ」
「いいじゃない、別に…」
「はぁ…」

アニスは小さな溜息を漏らし、言葉を続けた。

「…で、何思い詰めてんの?」
「えっ?」
「ティア、ここ一ヶ月変だよ」
「そんな事ないわよ!!」
「じゃぁ、さっきのぼやきは何?
まさか、陸に行ったときに何かされたのっ!?」
「ち、違うわよ!!」
「じゃぁ、何?!」
「…兄さんには言わないでくれる?」
「それは構わないけど…何?」

ふぅ、と一息置いてから口を開き始める。

「陸でね…人にあったの。
正確に言えば、溺れてるところを助けたって感じだけど…。
それで、その人の事が気になって…」
「……」
「アニ…ス…?」




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