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□Marmaid Tear《後編》
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―サァー、

耳に入るのは波が寄せたり返したりする音だけ。

(私は…、)

覚醒しきらない意識のまま、ティアは瞳を閉じた。


同刻。
砂浜には一人の青年が歩いていた。

「やっぱりいないのか…?」

あれから一ヶ月。
自分の命を助けてくれた恩人を探してはみたものの、見つからなくて。
しかも、立場上フラフラ出来る人間でもないため探す時間も限られてしまっていたのだ。

「…あれは?」

砂浜を歩いていると、目に留まったのは亜麻色の髪の少女。

似ている。

自分を助けてくれた恩人に。

確信はないけど、もしかしたら、という曖昧な気持ちのもと、青年…ルークは倒れている少女の近くに駆け寄った。

「おい!!大丈夫か?」

ふと耳に入った波以外の音に誘われるかのようにティアは目を開く。

「…よかった。生きてて」

(…あっ、)

視界に広がったのは一ヶ月前に自分が助けた青年だった。
見間違いではないかと思い、何度も何度も目を擦ったり瞬きを繰り返した。
すると、いきなり手を止められ、心配そうに顔を覗かれた。

「目に何か入ったのか!?」

あまり擦ると目に悪い、と言う彼が少しおかしくて笑ってしまった。

「何だよ…、」

ムスッとする彼に何でもない、と告げようにもそれが出来ないことに気がついた。

「どうした?」

(そうだ…私…、)

声が出ない、

そう言おうにも言えず、どうしようかと俯いた時だった。

「もしかして…、声、出ないとか?」

自分の言いたい事を察したかのように言ってくれた彼。
その言葉に対し、ティアは必死に頷いた。

「…そっか、」

うーん、と少し考えてからルークは思い付いたかのように口を開いた。

「とりあえず、俺のとこ来いよ。外は冷えるしさ!!」

うん、そうしよう。と一人で納得するルーク。
申し訳ない、と言おうとしても喋れないため、ティアは黙って着いていくしかなかった。




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