tos(R)

□Name of a Heart
1ページ/4ページ


綺麗なシャンデリア

華やかなドレスに身を包んだ娼婦

豪華なホール


…どれも自分には不釣り合いだ。

そんな事を考えながら、しいなは独りバルコニーにただずんでいた。

中で食事を楽しむのもいいが、周りの視線が気になって落ち着かないので独り風に当たっていた。

「はぁ…」

溜息しかでない。

「ゼロスのバカっ」

ここにはいない男の名前を呟く

「誰がバカだって?」
「ゼ、ゼロスっ?!!」
「何だよ?」
「いや…何でもないよっ!!!」
「あだっ…!!!」

―ゴンっ
鈍い音が響く。
やってしまった。
つい、いつもの癖で…というのも異常だが。

「何すんだよっ!!!」

ごめん、と謝れればいいのだが

「ふんだ。教えてやんないよ」
「ちぇっ、人がせっかく来てやったのによぉ〜。
俺様ショック〜」
「勝手に落ち込んでな」
「うわっ、しいなきっつ〜」
「うるさい」
「はぁ…そんな怒ると折角の衣装が台なしだぜ?」
「い、いいよ。似合って…ないし」

そう言って、プイっと顔を逸らすしいな。
はぁ…、と再び溜息をつき言葉を紡ぎ出す。

「しいな」

いきなり落ち着いた心地よい声で呼ばれ、ピクリ、と肩が震えた。

「な、なにさっ!!」

虚勢を張るが、そんなものは気休めにすらならない。
不意にゼロスに手を引かれ、向き合う形になった。
鮮やかな紅の髪、整った顔…
なんだかんだで綺麗な男である。

「何で周りがオマエの事見てるかわかるか?」
「そんなの…似、」
「合ってるからだよ」
「えっ?」

予想外の答えに驚くしいな。
天然か…?などと思いながらも言葉を続けるゼロス。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ