tos(R)
□atonement
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…俺は、
死んだんだ、
仲間を売って。
でも、やっと解放される、
…神子の宿命から。
atonement
「…いっ、」
ゼロスは小さく唸って体を起こす。
「…俺は、」
死んだんじゃないのか?
そんなことを思いながら辺りを見渡す。
天井は木目の活かされた落ち着いたデザインで、壁は土壁。仕切になっているのはドアではなく襖。
「目、覚めたかい?」
「…えっ?」
自分の目の前に現れたのは先刻まで自分と戦っていた少女で。
しかし、一つ違うのは彼女が少々幼いということだ。
「ビックリしたよ。村の外に人が倒れていたんだから、」
そう言って少女は苦笑しながら、口を開く。
「あたしは、藤林しいな」
「…俺は、」
自分の名前を名乗ろうとしたところで、ハッと口を閉じる。自分の名前を名乗るわけにはいかないし、かといって黙っているわけにもいかない。
「あんたは…?」
あぁー、と口ごもりつつ、頭に思い付いたワードを口にする。
「…ラット」
「ラット…?」
似合わない名前だね、と目の前の少女は微笑む。
ラット…、意味はネズミ。他にはスパイに裏切り者。
今の自分にとってピッタリ過ぎて逆に笑えてしまう。
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