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□今宵、月が見えずとも
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「ひっ…」
「何故ここを拠点にした?」
「テメェには関係ねーだろ…」
大気から槍を取り出し、首元に勢いよく突き付ける。
その顔に優しさの破片は微塵も無い。
見た者を一瞬にして凍らせるほどだ。
「素直に答えろ」
「わっ、わかったっ!!」
――――――
取り調べも終わり、部下達は撤退の準備を始めた。
賊がねぐらにしていた場所は
かつてガルディオス家が存在していた場所だった。
そして、自分の目の前には…
最後の戦地、彼女を失った場所への扉が広がっていた。
「……」
扉に向かって一歩踏み出したときだった。
「カーティス大佐!!」
「何だ?」
突然、部下に呼ばれ我に帰る。
「撤退準備、完了致しました」
「そうか、ご苦労」
「いかがなさいましたか…?」
「いや…、少し先に行っててくれないか?」
「はっ!!」
「頼んだぞ」
部下にそう言い残し、扉に向かって歩き始める。
僅かな希望を胸に抱いて…
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