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□Marmaid Tear《後編》
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「着いたぜ」
案内された場所はきらびやかな王宮で、天井には豪華なシャンデリア、足元にはモザイクタイルが敷き詰められており、その上には美しい絨毯が敷かれていた。
(これが、人間の住んでるお城…、)
本で見たり、周囲から聞いたりしたことはあったが、実物を見るのは初めてで、好奇心の強いティアは今にも探索したい気分だった。
「どうした?」
落ち着かない態度をしたティアにルークは問い掛ける。
しかし、ティアは何でもない、と言うように首を横に振った。
「何でもない?…ならいいけど。…おっ、ここだ」
ルークに連れられてたどり着いた場所は綺麗に整えられたシンプルな部屋だった。
「たぶん、足りないものとかあるだろうから、必要になったら言ってくれ…っても、喋れないのか…」
またまた考え込むルークにティアは思い付いたように、その辺にあった紙とペンを拾った。
「えーっと…、ごめん」
「…?」
「俺、古代語読めないんだ…」
唯一、伝えられると思った手段は一瞬にして散ってしまった。
「ホント、ごめん!!…明日までに出来るだけ覚えとくよ」
そしたら、話が出来るだろ?
笑顔で言う彼に少し驚きつつも、やはり、自分のために努力してくれるのが嬉しいのか、自然と笑顔になる。
「じゃぁ、今日は遅いし…、また明日な。
あっ、城の人達にはあんたの事話しておくから」
コクリ、と頷き出ていくルークを見送った。
しかし、数分もしないうちに彼が戻ってきた。忘れ物かと思ったが、忘れるようなものを持ってない。
不思議と思い、首を傾げると少し困ったように笑いながら口を開いた。
「…自己紹介、まだだったよな。俺はルーク。あんたは…って、声出ないんだっけな」
そう言ったルークに対し、ティアは伝えようと口を開いた。
『ティア』
声には出ないが、伝わらないかと思い、彼女がとった行動。
「えっ…?」
『ティ、ア、』
「…ティア?」
口を大きく開いてみたためか、伝わったらしく、ティアは笑顔で頷いた。
「じゃぁ、ティア。また明日」
そう言って今度こそ戻っていく彼に手を振って、おやすみなさい、と唇で形を作った。
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