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□Marmaid Tear《後編》
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あれから数日。

月は一回見えなくなったが、徐々に形を戻し、今では半分まで自身を取り戻していた。

…あと2週間あるかないか、

そんな事を考えながら窓の外に浮かぶ月を見ていると、不意に部屋の扉が叩かれた。

「ティア、居るか?」

そう言って入ってきたのはルークだった。

「ごめん、仕事が長引いてさ」
『うんん、お疲れ様』
「あっ、これお土産」

一緒に食おうぜ、と差し出されたのは苺の乗った可愛らしいショートケーキだった。

(かわいい…)

差し出されたケーキをうっとりと見つめるティアがおかしく思えて、つい笑ってしまう。

「そんなに気に入ったのか?」

悪戯な笑いと一緒に聞こえた声に、恥ずかしながらも頷く。

「よかった、気に入ってもらえて」

結構悩んだんだぜ、と言うルーク。
その一言一言にときめいてる自分がどこかにいた。

この半月ほどで、二人は普通に会話できるほどになっていた。会話といってもティアは筆談なのだが。
会話の内容は、ルークの仕事の話、お互いの境遇の話と大きな事から些細な事まで沢山あった。

話していくうちにティアはだんだんとルークに惹かれ、ルークはティアに惹かれていった。

「なぁ、ティア」
『何?』
「…ずっと、一緒にいてくれないかな?」

唐突に告げられた言葉にティアは戸惑った。

出来ることなら、一緒にいたい、

叶うことなら、もっといろいろ話したい、

何も差し支えるモノが無ければ、自分が人間なら素直に承諾しただろう。
だが、自分は人魚で、別れの時は刻々と近づいている。

「ティア?」
『な、なに?』

動揺したようにペンを走らせた。

「…ごめん、困らせちゃったかな?」
『そんなことないっ!!』
「ティア?」

感情のままに書いてしまった言葉に急いで上書きをした。

『ごめんなさい、私…、』
「…きっと疲れてるんだな。今日はゆっくり休めよ」

じゃぁな、と言ってルークは部屋を後にした。


…どうしたらいいの?

もっと話したいし、触れたい、

…気持ちを伝えたい。


時間に反比例して想いはどうしようもなく募るばかりで…。
やり場のない気持ちは涙に変わり、声にならない声でティアは泣いた…。




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