toa

□歌うように、緩やかに
2ページ/5ページ


「あー!!何でこんなに複雑なんだよぉー!!!」
「さぁな」
「はー…。キレてもしょうがないよなぁ〜」
「その通りだ」
「アレ?…そー言えば俺、誰と喋ってんだ?」

疑問に思い、頭を抱える。

「今更気付いたのか」

後ろを振り返ると、短い黒髪の眼帯を付けた女性がいた。

「…うわっ!!だ、誰だ…ですか…?」
「そんなにビックリしないでもらいたいな。
人にものを聞く前に自分が名乗ったらどうだ?」
「あっ…、すみません。
俺はルークって言います。
ルーク・フォン・ファブレです」
「ほぉー。キミがルークか。
私はカンタビレだ。士官候補生の教官も勤めている。
…と言っても、勤め先はこの本部ではないがな。ところで…」
「何ですか?」
「何故、こんな所で迷子になってるんだ?」
「迷子って…」

周りをキョロキョロと見ていると、吹き出したようにカンタビレは言った。

「キミの事だよ…」
「……あっ」
今更気付いたかのように呟く。
その反応に吹き出すカンタビレ。
「な、何笑ってんだよ!!
こんなに複雑だと迷うだろ!!?」

さすが七歳児。
自重するどころか、むしろ開き直っている。

そして、それにより笑いの加速度に拍車がかかるカンタビレ。

「アハハハハ…っ。悪い悪い。
迷子扱いは失礼だね」

一息ついてから、もう一度口を開く。

「…で、どこに行きたいんだ?」
「図書室…」
「調べ物か?」

少し俯くルークに問い掛けた。

「いえ…。と、友達がいるので…」

友達と言ったことに少し後悔してみたりする。
それを見たのかカンタビレは悪戯そうに微笑みながら言った。



次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ