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□向風ときどき追風
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「あーぁ、赤信号かよ…」
もう怒りを通り越え、むしろ冷静になりかけていた。
やっとこさ上り坂を越え、その後に待っている下り坂の勢いを利用しようとするもやはり向風のせいでうまくいけなかった。
そしてあげくの果て、赤信号。
俺は向風体質なのか?…てか、そんな体質あるかよ。もしかしたら俺、ギ●スブック乗れるんじゃね?
などと心の中で叫んでいるときだった。
「はぁ…、遅刻確定ね」
横からそんな独り言が聞こえ、ちらっと見てみる。
―か、かわいい…
亜麻色の髪とサファイアのような瞳を持った少女が水色の自転車に乗っていた。
制服からして、オラクル学園の生徒だろう。
じっ、と見とれていると、こちらの視線に気付いたのか怪訝そうな顔でこちらを見た。
気まずさを感じ、すぐに目を反らした。
空気が読めてるのか読めてないのか、信号が青に変わり、少女は走り出した。
はっ、として俺も後に続くようにペダルをこいだ。
が、次の瞬間だった。
今までとは比べものにならないほどの強風が吹き、目の前の少女の自転車がふらつく。
「きゃっ!!!」
短い悲鳴とほぼ同時に、彼女の自転車が転倒。
考えるより先に何故か俺の体が動いた。
自分の自転車を放り出して彼女を助けようと走った。
かっこよく助けたい、とか思ったけど、そんな暇はなくて、俺は彼女と自転車の下敷きに。
俺はクッションじゃぬぇーっつーのっ!!!
…なんて、言わねぇけど。
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