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□向風ときどき追風
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「いてて……。って、何してんの!!?」

何してんのって…、

「いや、危なそうだと思ったから…」
「危なそう…って、あなた馬鹿?」
「えっ?」
「人が転ぶのなんてほっとけばいいじゃない!!…あなたのせいで、遅刻確定だわ」

いや、俺のせい以前にもう確定してただろ…。

とは言えないので、思わず苦笑い。

何とかして自転車を起こして歩道の隅に寄った。

「それにしても、信号渡り切ってからでよかったな」
「…まぁね。あっ、」
「何?」

聞き返すと、彼女は白いハンカチをポケットから取り出して俺の顔に触れた。

「いてっ」
「大人しくしてて…ごめんなさい」
「何が?…って、痛ぇよっ!!」
「私のせいで…」
「いや、不可抗力だからしょんねぇーよ…って、おまえなぁ!!」
「何?」
「…力入れすぎ」
「あっ、ごめんなさい!!」

天然なのかなんなのか…。
なんかペース狂うなぁ…。

「よしっ、」

そう言うとペタリ、と俺の傷口に絆創膏を貼った。

「ありがとな」
「うんん、こちらこそありがと。
念のため、病院行った方がいいわね」
「へ、平気だよっ!!それに、遅刻しちまうだろ?」
「もう、授業始まってる時間だからいいわよ…。そういうあなたは?」
「俺はいいよ…。遅刻常習犯だし」
「…最低ね」
「しょーがねぇだろっ?!!俺が自転車乗ると、いっつも向風なんだからよっ!!」
「じゃぁ、この時間の登校は避けた方がいいって事ね?」
「なっ!!!」

あながち間違っちゃないけど、少しショックだった。




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