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□欲望に溺れなさい
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〜プロローグ〜
それはあまりにも突然だった。
行きつけの居酒屋を出て夜道を歩き出した銀時は、突如 背後に気配を感じた。
それがよい気配でない事はすぐに分かり、木刀に手を伸ばしたが、酔いが回っていた銀時は一瞬の遅れを取ってしまう。
鼻と口をハンカチで覆われた時にはヤバい、と頭の中で警告音が鳴り響いた。
しかし、時すでに遅し。
睡眠薬が染み込んでいたハンカチをグイッと押し当てられれば、銀時はたちまちクラりと意識を手放しはじめた。
酔っていたとは言え、銀時に対してこんなにもアッサリと襲撃を成し遂げたのだ。相手はどうやら相当の強者の様だ。
銀時が瞼を閉じる寸前、その視界には、真っ白な隊服が入り込んだ。
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目を覚ました銀時が見たのは、ケータイを片手にメールを打っているらしき佐々木異三郎。そして、ベッドだけが置かれた 彼の隊服と同じ真っ白な部屋。
「お目覚めですか?ちょっと待って下さいね?今メル友にメールしているので」
そう、銀時を気絶させ連れ去ったのは、先日知り合ったばかりの自称銀時のメル友、見廻り組局長、佐々木異三郎であった。
状況が飲み込めない銀時は、不安げに瞳を揺らす。
すると、異三郎はメールを打ち終わったのか、折り畳み式ケータイをパタンと閉じた。
「ここが何処だか気になるんですか?心配はいりませんよ?ここは見廻り組屯所の一室です。貴方の為だけに作らせました。
どうです?気に入って頂けましたか?」
「……」
銀時は訳が分からず言葉が出てこない。
「………お忘れですか?先日、私が貴方を好きだと言って告白した事を…」
すると銀時の脳裏には、この目の前の男に想いを告げられた時の事が思い出された。
確かに先日、告白をされた。しかし、銀時にそのケは無かった為、振ったのだ。
「貴方が私を振った後、私言いましたよね?諦められない。絶対に、どんな事をしてでも貴方を手に入れてみせるって。
私のものにしてみせるって…。
だからこうして実行にうつしてみました」
そんな物騒な台詞に似つかわしくない程の穏やかな微笑みを見せた異三郎に、銀時の頬には、まさか本気だったなんて、と冷や汗が伝った。
「…さぁ‘楽しい事’をはじめましょうか?ね?銀たん」
コツコツと靴音を響かせ近づいて来る異三郎に、銀時の背筋はゾクりと震えた。
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