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□銀色キラキラ
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第1話 (1/2ページ)
・・・
そいつは突然現れた。
ある日、松陽先生が寺子屋に連れて来たのだ。
銀色の髪の毛がフワフワと揺れていて、ちっちゃくて、その瞳はなんだか儚げで…
『………』
俺は、その銀色がキラキラ光って見えて…まるで、天使みたいだって思ったんだ
「この子は今日から皆さんと一緒に勉強をする事になりました」
寺子屋には、時間がまだ早くて俺とヅラしか来てなかったけど、松陽先生はニコリと笑いながら俺たち2人に銀色を紹介した
「…」
銀色は、俺とヅラがジッと見ていると気づくと何処か不安げに松陽先生の後ろに隠れる様にして先生の着物をギュッと握った
………か、可愛いじゃねぇか
「この子達は、高杉晋助くんと桂小太郎くんです。君の友達になるのですから、怖がらなくてもいいんですよ」
先生に背中を押されて俺たちの前に出された銀色は、先生の言葉にも安心が出来ないのか自分の足元に視線を落としてしまった
「桂小太郎だ。よろしく」
ヅラは気にしないで銀色に名乗る。それに続いて俺も
『高杉…晋助』
銀色に釘付けになりながらも、一応名乗る
「お前、名前は?」
ヅラは聞くが、銀色は少しの間の後でフルフルと頭を横に振った
「ん?名前を言いたくないのか?」
ヅラが聞けば、尚も銀色は無言のままフルフルと横に振る
「………そうじゃ…なくて…」
この時、銀色が初めて喋った
俺の、銀色に対しての感情を何て呼ぶのかなんて分かんないけど…俺は一目見て、この銀色の生物にメロメロになっていたのかも知れない
だって…
……ちくしょう。こいつ、声も可愛いじゃねぇか
と、何だか堪らなく
ドキドキしたんだ
「………ない」
銀色はポツリと言う
「「『?』」」
俺達は銀色の言葉にハテナマークを浮かべる
「何が無いのだ?」
ヅラが聞き返せば、銀色は躊躇いがちにこう返事をした
「………なまえ…ない」
「「『…』」」
俺達は銀色の言葉に目を丸め驚いた。でも…
どんな経緯で先生が銀色をここに連れて来たにせよ、薄汚れた着物に細い体つき…
親に捨てられたか、死に別れたか、どちらにせよ…きっと、この銀色は孤児。
この歳になるまで…いつからかは分からないけど、ずっと独りだったのか?
だから、自分の名前も分からない…いや、無いと言ったのだと、じきに解釈できた。
それはヅラも同じだった様で、やがてヅラは申し訳なさそうな顔をした
銀色もシュンとしてしまい、その場の空気が重苦しい感じになりかけた時、俺は口を開いた
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