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□銀色キラキラ
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第6話 (2/4)




今日、最初に寺子屋へとやって来たのは、常に5分前行動がモットーの真面目な桂 小太郎であった。


教室に入るとそこに銀時の姿があり、桂は目を丸めた。


「銀時、珍しいな?
お前が教室に一番乗りとは」


声をかけられ桂の存在に気づいた銀時はクルッと振り向き立ち上がるとトテトテと桂へと近づいた。


「づらぁ!」


「ヅラじゃない!桂だ!」


いつもの訂正をいつもの様にスルーした銀時は、もちろん呪文を口にする。


「とりっく、とりーと!」


「…は?え、なんだ?」


聞き返されてしまった事に、銀時は不安そうに眉を寄せた。


すると、桂に背中を向け無言で教室を後にする。廊下まで出ると‘せんせぇー’と呼び掛ける声が桂の耳に入る。


「………??」


訳が分からないまま暫し待つと、銀時は出て行った時と同様に小走りで桂の元へ戻って来た。


すると、銀時は再び桂に向かって笑顔で口を動かす。


「とりっく、おあ、とりーと!」


お菓子をくれなかった桂に、どうやら自分の口にした呪文が間違っていたと解釈した銀時は、松陽へ聞き直しに行ったのだった。


「トリック、オア…あぁ!」


そこでようやく桂は銀時の言葉の意味を理解した。


「確か…それ、何とかと言うお祭りの…」


「はろうぃん、だよ!」


ニコリとしながら言う銀時に、桂は感心した様な目を向けた。


「ほぉ!よく知っていたな。偉いぞ、銀時」


誉められ、照れくさそうに えへへ、と銀時はハニカミながらも忘れずに何かくれ!と言わんばかりに両手を差し出した。


「とりっく、おあ、とりーと」


念押しにもう一度言いながら。


「ぁ…。す、すまん銀時、今は菓子など持っていなくてな」


貢ぎ物の為にいつも土産で持ってくる高杉ならともかく、と思いながら桂は謝る。


すると、桂の言葉に銀時はガーンといった顔をして再び無言で桂に背中を向け駆け出すと、さっきと同じ様に廊下に出て‘せんせぇー!’と呼び掛けながら行ってしまった。


取り残された桂は、ま…まずかったか?と、自分は悪くない筈だが何だか銀時に申し訳ない気分になった。


何だかんだ言って、桂も高杉や松陽と同様に銀時に甘いのであった。


一方、銀時はその時…。


「せんせぇ…」


「どうしたんですか?」


松陽の元へまっしぐら。


「づらにじゅもん、きかない!!」


ビックリ!


といった顔をする銀時に…、
まぁ、銀時の為に土産と称した貢ぎ物を持ってくる晋助ならともかく、他の子がお菓子など持っている訳もない、と松陽は本日何度目かの苦笑をする。


そして銀時と同じ目線の高さまでしゃがむと、口を開く。


「銀時、実はあの呪文は
‘お菓子をくれないとイタズラするぞ’って意味なんですよ」


「いたずら?」


「そう。だから、あの呪文を言ってもお菓子がもらえなかったら、ちょっとしたイタズラならしても構いません。私が許します」


とんでもない事を言い出す松陽であった。


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