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□三食(プラスおやつ)昼寝付き
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「ただいまアル〜銀ちゃん!」
「お帰り!神楽、定春!」
心配をかける訳にはいかないから、と笑顔を作り、近くの川へと行っていた2人…(1人と一匹?)を出迎える。
「銀ちゃん、今日もいっぱい取れたアル!!」
神楽は 入れ物いっぱいに入った魚を嬉しそうに俺に見せた。
「おぉ、今日も大漁だなぁ!」
「今日は定春が大活躍だったアルヨ!ねぇ定春っ!!」
「ワンッ!!」
「そっか。ありがとな、定春」
言いながら定春の頭を撫でてやれば、定春は嬉しそうに尻尾をフッサフッサと振った。
「昨日は焼いたから、今日は煮魚にでもすっか?それと、昨日取ってきた山菜がまだ残ってるから、それの天ぷら」
「きゃっほーい!豪華アル!」
魚は取れる。山菜も取れる。
もちろん全部、無料(ただ)で。
悲しいかな坂田家の食卓は、確かに田舎(こっち)に来てからの方が潤ってるな。
「あっ!魚は甘辛い味付けにして欲しいネ!あの味はご飯が進むアルヨ!まっ、銀ちゃんが作るもんだったら何でも美味しいアルけどなっ」
「お前…、あれ以上ご飯の量を進める気かよ?
たくっ、しょうがねぇなぁ」
ま、誉めてもらった訳だし?
多少の事は多目に見てやるか、なんて思いながら言うと、神楽はキョロキョロと辺りを見回した。
「あれ?新八はまだ帰って来てないアルか?」
「あぁ、そう言えば まだだな。なんだ、新八に用か?」
「酢コンブのお土産頼んどいたネ。昼前に最後の一箱を食べ終わっちゃったアル。新八っていうか、酢コンブに用アル」
「なんだ、そういう事。
まぁ、頼んだちょっとの買い出しと、それにお妙に会って来るだけみたいだし、そろそろ帰って来んじゃねぇか?」
家の中の時計を見れば、16時を少し過ぎていた。
「日が暮れるまでには戻って来るさ。
こっちは、新八が帰って来るまでに晩ご飯でも作っとくかね」
「私も手伝うアル!」
「その前にお前は定春と風呂入って来い?
どんだけ魚取りに夢中になってんだよ。全身ずぶ濡れだぞ?」
それから神楽も定春も元気良く返事をして風呂場へ姿を消し、俺も魚を手に台所へ向かった。
晩ご飯の仕度も進み、暫くすると神楽と定春が風呂から上がり、台所から見える居間でくつろぎ始める。
こういうの、なんか良いよな。家族との何気ない一時って感じで、胸の辺りがほんわかあったかくなって、すごく幸せ。
麦茶をコップに注ぎ神楽に渡してやると笑顔を向けられた。
「ありがとうアル銀ちゃん!」
その時、玄関から扉を開ける音が俺たちの耳に届いた。
「新八 帰って来たアルか?」
「だな」
返事をすると、俺は台所に戻り、ガスの火を止めた。
その間に廊下を歩く足音が俺たちへと近づいて来て、
「ただいま帰りました」
新八が姿を見せた。
「お帰り、新八」
鍋に蓋をする為、新八からコンロへと視線を移す。
「……銀さん、お客様です」
「…客?」
俺の背中に向かって言った新八に俺は、あぁ、お妙?
なんだ、一緒に来たのか。
なんて思いながら振り返った。
「っ…」
そして、新八の背後から姿を現した‘客’を見て、俺は驚きの余り目を見開き息を飲む。
毎日毎日、諦めなければと思いながらも、彼に会いたい、と、強く思っていた俺の願望が作り出した幻なのかと、
一瞬本気でそう思った。
だって、コイツがこんな所にいる訳がない。
でも…、
「………なんでマヨラーがここに居るアルか?」
神楽の一言で、あぁ、コイツは本物の土方なんだな、と、
認めざるをえなかった。
第8話へ つづく