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□三食(プラスおやつ)昼寝付き
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第8話





土方は急遽休みをもらい、隊服から着流しに着替えると、すぐに新八と一緒に江戸を後にした。


電車に揺られる事約4時間。
2人は田舎町へと行き着く。


更に、駅から歩く事20分。
目に見えて緑が多くなってきた頃、新八は口を開いた。


「あの家です」


土方が新八の視線の先を追うと、そこには赤い屋根の古びた一軒家が建っていた。


「万事屋のみんなで、今はあの家で暮らしています」


言うと、新八は足を進め、家に近づき、そして土方も黙って新八の後に付いて行った。


ようやく到着すると、新八はガラス扉を開け、草履を脱ぐと玄関に上がり、土方に振り返る。


「どうぞ」


「…あぁ、邪魔する」


土方も草履を脱ぐと、2人で廊下を進む。


そして、


「ただいま帰りました」


新八は声を掛けた。


「お帰り、新八」


久しぶりに聞いた銀時の声に、土方は胸を高鳴らせた。


ずっとずっと、取り戻したくて仕方なかった銀時が、ようやく目の前にいる。 しかも、銀時は今、自分の子を身籠っているかも知れないのだ。


土方の心臓は高鳴りが収まる事なく益々早く脈打つ。


「……銀さん、お客様です」


「…客?」


その言葉に、背中を向けていた銀時は右手で持っていた蓋を鍋に落とすと新八へと振り返った。


「っ…」


そして、新八の後ろに立つ土方を見て、目を見開き心底驚いた顔をした。


「………なんでマヨラーがここに居るアルか?」


新八に続き、土方も姿を現した事に、神楽は首を傾げる。


しかし、神楽の言葉に返事をするでもなく、銀時、土方は暫し無言で互いに見つめ合った。


久しぶりに見る銀時は、少し儚げで、ますます綺麗になった。


久しぶりに見る土方は、まっすぐな瞳をしていて、ますます男らしく、カッコ良くなった。


互いに惚れ直していたが、銀時は急にハッと我に返る。


目の前に、土方が居る。


心音は早く大きくドッドッドと高鳴り、パニック寸前。


「な…、なんで…ひじ、かた…こ、こんな所に…え?」


すると、新八が口を開く。


「ごめんなさい銀さん。
僕が、土方さんをここまで連れて来ました」


「は?な、なんで!?」


銀時は土方からバッと勢いよく新八へ振り向く。


「やっぱり、銀さんと土方さんは ちゃんと話し合うべきだって思ったからです」


「は?話し合うって…」


腹の子の父親の事を新八に知られているとは思ってもいない銀時は、訳が分からずハテナマークの連続である。


「今後の事に決まってるじゃないですか。………実は僕、知ってたんです。銀さんと土方さんが付き合ってた事」


「っ…、は、はぁ!?」


新八の言葉に銀時はビックリし声を上げたが、神楽も同様に驚いた顔をし、目を丸めた。


「だから僕…、
銀さんは一生言うつもりは無いって言ったけど、でも、土方さんには知る権利と、義務もあると思って、ごめんなさい。

……本当の事を言いました」


「っ…本当の事って…」


───まさか、
と思いながら銀時が聞くと、新八は思った通りの返事をした。


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