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□三食(プラスおやつ)昼寝付き
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第1話




ある日、昼休憩中に屯所近くのファミレスに呼び出された。
万事屋に。コイツから誘ってくるのは珍しい、なんて思いながらカップを傾けコーヒーを一口飲んだ時、告げられた。


あまりにも突然に。


「……別れてほしいんだけど」


「…………は?」


「って言うのも変か。
別に俺ら付き合ってた訳じゃなかったし。ただのセフレ…、みたいなもんだったもんな」


いや、いやいやいや。
確かにそうだけれども…。


「……なんでだ?」


急すぎんだろ?


「もうさ、俺らの関係、終わりにしようぜ」


「っ…、聞けよ!!なんでだって質問してんだろうが!?」


つい大きめな声が出てしまい、周りの客やら店員やらから視線を集めてしまった。


「…」


万事屋は、はぁ、とため息混じりで息をはき、ポツリと呟くように口にした。


「………好きな奴が出来た」


「っ…」


万事屋のその言葉に、
俺は目を見開き、一瞬 息をするのも忘れて固まった。


「だから、お前との関係を清算したい」


万事屋は、今、な…なんて言った?好きな奴が…出来た?
………万事屋、に?
だから、俺とのこの…セフレって関係を、終わらせたい?


はっ、はははっ。す、好きな奴、ねぇ。万事屋…に。


な、なんだ?まさか、俺…ど、動揺してんのか?


心臓が、ハンパなくバクバクしてっけど!?
いや、まさか。た、たかがセフレ相手に本命(すきなやつ)が出来たぐれぇで。こ、この俺が動揺なんて、いや、まさか。


ないわ。うん、ないないない。


「…じゃ、そういう事だから。まぁ…今までどうもでした」


万事屋は軽く、本当に軽く頭をペコリと下げながら言うと、席を立とうとした。


「っ…つうか待てや!」


俺はそれを咄嗟に引き止めた。


ってか、アレ?
何で引き止めてんだ、俺。
別に、いいじゃねぇか。
このままお去らばしたって。


なんだ?まさか、コイツとの別れを、名残惜しくでも思ってんのか?この俺が?


「………なんだよ?」


万事屋は不思議そうに、
と言うか怪訝そうに俺を見る。俺に引き止められた事がふに落ちない、といった顔だ。


さっさとこの場から立ち去りたそうな雰囲気バリバリの万事屋に、俺は瞬間、何だか無性にムッとした。


いくら割り切った関係だからって…。いくらただのセフレだからって…。


何度も肌を重ねた相手だぞ?何度も何度もお前は俺に抱かれたんだぞ?


今は2人の、そんな関係の一応終わりって時な訳だろ?ちょぉ〜っとばかしでも、寂しげな態度を取ったっていいだろうが?


それを、俺との別れをなんの事はない、みたいに。大した事じゃない、みたいに…。


本っ当に可愛くねぇ女だな。


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