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□三食(プラスおやつ)昼寝付き
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「俺ァまだ何にも言ってねぇだろうが」
「………は?」
万事屋は、目をパチクリとさせる。アレ?何だこの顔。
万事屋って…、
こんな、可愛かったっけ?
いや可愛いって何だ。
なしなし!
よし。今の無し!!
「…なに?なんか不満な訳?」
万事屋は、そう言うと首を傾げる。
あ、やっぱ、可愛い…かも。
「別に土方くんはさ、俺との関係が無くなったって、他にいくらでもセフレだろうと遊びだろうと、相手はいるだろ?だったら全然問題ないじゃん。俺ひとりと手が切れるぐれぇさ」
やっぱ可愛くねぇ!!
「そ、そりゃあ構わねぇよ!
お前との関係が終いになるぐれぇ別にどぉって事ァねぇ!」
「………」
何か悔しくてキッパリ言うと、万事屋は少し開いていた口を閉じ、黙り込んだ。
「た、ただだなぁ…。
その、アレだ。報告みたいに勝手に告げて、俺の返事も聞かずに勝手に立ち去って行こうとするってのは…アレだろ?
その…常識はずれっつうか。
まぁ?別に俺達ゃ、そんな大した仲だった訳じゃねぇが、最後なら最後らしく、ちゃんと別れの挨拶と言うかだな…」
…つうか、え、最後?別れ?
コイツ………万事屋、と?
途端、自分で言った言葉で、自分の心臓にグサッと何か刺さった気分に陥った。
「………はぁ」
俺が言い訳がましく言葉を並べれば、万事屋は再びのため息の後、口を開いた。
「はいはい。
ようするに、俺から一方的に終わりを言い渡されたってのが、自分が捨てられた感がしてプライドの高い副長様はそれがお気に召さなかったんですね?」
「なっ…なに言ってやがる!?す、捨てられたって、それじゃあ、お、おお俺がお前に気があるみてぇじゃねぇか!?」
「っ…」
俺のそんな言葉に、万事屋は一瞬、本当に一瞬だけだったから見間違いだったのかも知れないが、眉を下げ、ピクリと肩を揺らし、たじろいだ様に見えた。
「…………分かってるよ。
俺と土方くんは、そんな関係じゃ、全然ねぇじゃん」
万事屋は、フイッと俺から目を反らし、そう呟き、そしてこう続けた。
「じゃあ、どうぞ?言えば?
最後の、別れの挨拶ってやつ」
「っ…」
べ、別に…構わねぇだろ。
たかが、万事屋との…坂田銀時との関係が、終わるぐれぇ…。
も、元々っ…、
コイツとの始まりだって酔った勢いっつうか、意識が戻った時には既にラブホになだれ込んでた後だった、みたいな…ほとんど、事故みたいなもんで…、
2人の仲が、それからも続いてたのだって、ただ、体の相性が良かったってだけで…、本当、それだけだったじゃねぇか。
それに、そうだよ。
こうして迎える終わりを考えた時、コイツとなら、後腐れ無さそう、とか、思ったからこそ、コイツとの関係だって、始まったんじゃねぇかよ。
「………ま、まぁ…なんだ。
その、す、好きな奴ってのと………う、うまく…いきゃあ、い、いいけどな」
「………どうも」
「お、おぅ。
………じゃ…じゃあ、な」
「……あぁ、じゃあな」
どうって事、ねぇよ。
万事屋との仲が終わるぐれぇ。
…どうって事、ない筈なのに…なのに……何なんだ?
この、堪らない喪失感は…。
自分の事でいっぱいいっぱいだった俺は、ちっとも気づきゃあ しなかった。
「じゃあ、さいなら」
万事屋の、
少しだけ震えたその声に。
俺を残し、ファミレスを出た後、一人になった万事屋が、
「………ばいばい、土方くん」
ギュッと拳を握り、泣きそうな顔で、声で、そんな言葉をポツリと呟いていた事に。
第2話へ つづく