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□三食(プラスおやつ)昼寝付き
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第4話




[side 銀時]



楽だった。土方と居るのは。
はじめこそ俺と土方は会えば必ずと言っていい程 毎回喧嘩に発展する、自他共に認めざるをえない犬猿の仲だった。


それが、酔っぱらった勢いと言う名の事故みたいなもんで体だけの関係が始まって…。


正直ムカつく奴だけど、でも体の相性はすげぇ良い。
テクニック、てぇの?ちゅーは上手くて気持ち良いし、えっちも上手くて超気持ち良いし。


ホテル代はいつも土方が払ってくれるし、それにたまに甘味とかも奢ってくれる。俺にとっては良い事づくめな訳で。


恋人ってめんどくさい関係じゃなく、セフレって割りきった関係だから、本当に楽だった。


何より、土方と一緒にいると、なんだか、心地よかった。


だから、こんな時が…そりゃあ、一生とは言わない。でも せめて、ゆっくり進んで続けば良いって思ってたんだ。


なのに……、
困ったな。なんで、こんな事になっちまったんだろうな…。


やけに生理が遅れてるとは思ってたんだ。……それが、
まさか、妊娠してるなんて…。


まさか、と思いながらも薬局行って妊娠検査薬を買って、すぐさま家に帰って、調べた。


そしたら陽性だった。


でも、その可能性が高いってだけで、絶対に、百パーセント検査薬が信頼出来る、なんて事ないから、念のため産婦人科にも行ったら、そしたら…、


やっぱり妊娠してた。


………生みたい、な。


俺には親がいない。もちろん兄弟も。新八や神楽って家族同然の存在はいるけど、でも…血の繋がった‘家族’って奴は誰ひとりとしていない。


だからかな…。俺の血を分けた人間がこの世に誕生すると言う事が、奇跡に思えた。


生みたい、絶対に。


……それに、お腹の子は、土方との赤ちゃんだ。


だから、尚更、生みたい。


…だから尚更?


アレ?
なに、もしかして俺…、土方の事、好きだった?


おいおい、マジでか?


………まぁ、
考えてみれば そうだよな。


俺の人生の中で‘セフレ’なんて、そんなチャラついた奴は一度だっていなかったし、だいち、好きな奴とじゃなきゃ、いくら相性が良いからって…えっちしたいと思えねぇじゃん。


無自覚ってやつか。
もしかして、俺ってば最初っから、土方を好きだった?


…まいったな。俺がそうでも、土方にとって俺は、単なる体だけの…いつでも簡単に手を切れる気楽なセフレなのに。


そんな相手が自分の子供を身籠った、なんて知ったら、土方はどうするんだろうか?


もし、迷惑に思われたら?


もし、生むな、と…、
おろせ、と…言われたら?


そんなの、
俺には堪えられない。


妊娠の事、知られたら、きっとお前は俺を面倒くさく思うのだろう。だから、俺たちの関係は、終わってしまうだろう。
だからきっと、土方(おまえ)と一緒になる事は叶わない。


だって、土方が俺に求めているのは、ただ体だけなんだから。


それに、もしも土方が将来結婚するにしたって、きっと相手は‘真選組副長’という名に見合う、家柄の良い娘でないといけないだろう?


俺なんかが相手じゃ、お前の名が恥じちまうもんな。
そんな心配、あり得なすぎて必要なんて無いんだろうが。


………嫌なんだ。
両方を失うなんて嫌だ。お願い、この子まで奪わないで。


子供の父親が土方(おまえ)だって事、一生誰にも絶対に言わない。お前には迷惑は掛けない。


だから、お願い。
俺に、この子をちょうだい。


ごめん。
ごめんね、赤ちゃん。
あなたを、父親のいない子にしてしまう事を許して。


でも大丈夫、うちは賑やかだから。新八(おにいちゃん)や神楽(おねえちゃん)がいっぱいいっぱい遊んでくれるよ。


それに、俺が、父親の分まで あなたを愛してあげるから。


たくさん、たくさん愛情を注いで、大切に育てるから。


だから、
俺の所に、来てくれるよね?



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