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□おめでとっ
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最終話
翌日、早朝。
俺は銀時が眠っているベッドの横の床、絨毯の上で正座をしていた。
「………ンッ…ん」
モゾリとシーツごと銀時の体が寝返りをうち、ぽやや〜んと瞼をゆっくり開けた銀時の目と俺の目が合った。
「………」
「………」
暫し無言で見つめ合う。
「………えっと…、何でそんな格好?」
寝起きの声で言う銀時に、俺は頭を下げ、まさしく土下座をしてみせた。
「すまない銀時っ!!」
「…はっ!?」
チラリと様子を窺う為、顔を少し上げて見てみると、俺の突然の行動に、銀時は目を丸め、モゾリと体を起こした所だった。
「俺は最低な事をした!酔って記憶を無くしてるお前を、それをいい事に、俺は…俺はっ…お前に手を出した!」
「…ぁ、え?」
「いや、その前に、なんでこんな所に居るかって事だが、あっ、ここはラブホだ!」
「…………は、ぁ」
銀時はポカンとしながら相づちをうつ。
「昨日の夜、居酒屋で俺と会った事は覚えてるか?」
「……………覚えてるけど」
「そうか。で、だな…。
その居酒屋を出る辺りからお前、記憶無くしてるっぽいぐらいに相当ベロンベロンに酔ってて、もう一件行くって言って聞かなくてだな。それでお前、飲み屋と間違えてラブホ(ここ)に入っちまったんだ」
「…」
俺の説明に、銀時は無言でパチクリと瞬きをした。
「その…で、あの…よぉ。
突然こんな事 言われて驚くかも知れねぇが、俺っお前の事がっ好きなんだ!!
だから、お前を自分のモノに出来るかも知れねぇってなった時、俺はお前に手を出さずにはいられなかった!!」
再び頭をグッと下げる。
「……………えっと…うん。土方くんが俺の事を好きってのは、知ってたけど…」
ポツリと言った銀時に、俺は勢いよく頭を上げた。
「っ……え?は?知って、た?」
「うん。だって土方くんって会う度に俺の事エロい目で見てたもん。最近ずっと。なんつうの?視姦されてる、みたいな…」
「っ……」
視姦って…。
ま、まぁ、否定は出来ねぇが…。
「そ、そうか。そりゃ…悪かったな」
「………で?何が言いたい訳?」
気まずさ全開で銀時から目を反らしながら謝ると、銀時がシーツの中で体育座りの様な体勢を取ったのが視界の端に映った。
「いや、だから…。謝りたくて。
俺、お前の意識とか無視して、その…最後まで……ヤッた。
ヤッたってのは、そのまんま‘そう言う意味’で、…………セックス、だ。
俺は、お前を……抱いた」
俺は頭(こうべ)をたれ、膝の上で震える拳を握った。
銀時の反応が…怖い。
「その場だけの突発的な欲情とか、決していい加減な気持ちとかじゃねぇんだ。俺は、本気でお前が…、銀時の事が…、好きなんだ」
「………」
暫くの無言の後、銀時は はぁと小さくため息をついた。
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