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□おめでとっ
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第3話
───ポーンッ
7階に着くと、それを知らせる音が軽快に鳴り、続いて扉が開く。
「706号室だってさぁ!土方くぅん」
銀時は俺に向かってニコッとして言うと、廊下へと出た。
つうか…、コイツ、ここが‘どう言う場所’かちゃんと分かってんのか?
「あ、間違えちった。こっちだ」
いったん右に進んだ銀時は、すぐに引き返して来て左の道へと進み直した。
………分かってる訳ねぇよな。だってコイツ、酔って居酒屋かバーとでも勘違いしてここまで来ただけなんだもんな。
「………むぅ…?」
部屋の前に着いた銀時は、カードキーを差し込もうとしているが、どうやら酔っているからか、うまい事その細長い穴に差せないらしく、銀時は眉を寄せた。
「土方くぅん、やってぇ?」
首を傾げねだる様に言ってくる銀時に、目眩を覚える。
「………いや、やっぱもう帰ろうぜ」
「えぇ〜?土方くんってば、なに言ってんのぉ?」
ダメだ。
これ以上ここに居ちゃ。
俺は、お前の事が好きなんだぞ?
そんな俺を、こんな場所で無防備にも誘いやがって。いや、実際、コイツに誘ってる自覚は無いんだろうが…。
とにかくっ!
これ以上コイツとここに居たら、俺の理性がいつブッツリ切れるか分からねぇ。
酔って正常な意識を手放してる相手にダメだ。それはダメだ!!そんなの、無理矢理も同じじゃねぇか。
「もうお金払っちゃってんのに帰る訳ねぇだろ!バカですか?
いいもんっ。自分で開けるもんっ!」
言うと、銀時は下手な鉄砲 数打ちゃ当たる張りにガッガッと差し込み口目掛けてカードキーをどんどん宛てていく。
「おい、もう止めとけ。あんま乱暴にすると折れるぞ?弁償する羽目になるぞ」
銀時の腕を掴んで止めようとすると、その時、スポッとカードキーは差し込み口の中に入っていった。
カードキーが入ったそのすぐ横に、赤いライトが小さく点灯し、それは緑へと色を変え鍵が開いた事を知らせた。
「おっ、開いた」
自分の思い通りになった事に気を良くしたのか、銀時は鼻歌混じりに扉を開けて部屋の中に入ってしまった。
おい!そこが何する部屋なのか分かってねぇくせに暢気に入ってくな!!
不用意に俺を煽るな!
この天然小悪魔がっ!
チッ、これだから酔っ払いは…。
舌打ちをしながら、このまま放っとける訳もなく、今日何度目かで銀時の後を追う。
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