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□彼はアイドル
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そっち側の人間じゃない俺にとってコレは、アイツからの立派な嫌がらせなのだろう。
多分きっと、嫌悪感みたいなものでも与えたかったのだろう。
だが、残念だったな総悟。
そんなもん、ちっとも、これっぽっちも感じねぇ。
「そんなの、ゲイだからに決まってんじゃん。俺ね、昔から女がされるみたいにぐちゃぐちゃに攻められたかったんだ」
っ……///
───ドクンッ
同性である男相手にこんな風に思うなんて、自分でも凄く信じられねぇが…………、
でも、堪らなく興奮している自分がいるのは確かだ。
晩御飯もそっちのけで、
俺はこのDVDに、銀に、すっかり魅せられていた。
「あっ…ん、んっあぁっ」
や、やべぇ。
はぁ…はぁ、ぎ、銀っ。
俺、完全に勃起してる。
顔を真っ赤に染め、息を荒くはき、俺はいつの間にか自分の下半身へと手を伸ばしていた。
俺は、何度も繰り返しDVDを見た。銀に見惚れた。
銀の乱れた姿に、声に欲情しきった俺は、ソレをおかずに、銀の相手の男優を自分(おれ)に置き換え、妄想の中で銀をいい様に抱いた。
何度も。
心臓が高鳴る。
同時に、銀の相手の男優に酷く嫉妬もした。
じゅぷっ じゅぷっ シュコ シュコ
でも見る事を止められねぇ。
「くっ…ン、銀っ…銀っ!」
ドクンッ───ドピュッ…
欲が弾け、両方の手のひらはドロリと白く濁った。
「はぁ…はぁっ」
肩で息をし、テレビを見つめた。
「………………………銀」
堪らなく、銀が愛しかった。
「デビューしました、銀です。皆さん、宜しくお願いしまぁす。いっぱいいっぱい銀を見てね」
見たい、知りたい。
もっと、もっと銀の事が。
それから俺は、すぐにネットを使い銀の事を調べた。
銀に関しては大抵の事が知れた。さすが情報社会の現代。
俺が見たDVDは、銀のデビュー作。作成されたのは今から4年前。銀は俺と同い年。
銀──本名、坂田 銀時。
銀はデビューしてすぐ、本当にあっという間に、あのルックスと、演技力からか、爆発的な人気が出てかなりのファンを得た。
男からの人気は勿論の事、女(いわゆる腐女子というやつだ)からの人気も凄まじかった。
今までに数十本のDVDを出し、その売上は、10作目ですでに累計100万枚を突破したらしい。(もちろん俺は、ソッコーでDVDから写真集まで、銀の全出演作品を購入した。)
レンタルランキングでも、AV部門で(男×女のノーマルものをおさえ)常にと言っても過言ではなく、トップをキープしている。
動画サイトでも、銀が関わったものは、再生回数がその業界では断トツのNo.1を記録。
俺の想い人は、彼はAV界の、しかもゲイものの、しかも受け専門の現役トップアイドルだ。
簡単に手の届く相手じゃない事は分かってる。
住む世界が違いすぎる。
一方的に知ってるだけで、向こうは俺の存在すら知らないし、会う事など、もしかしたら一生叶わないのかも知れない。
でも、俺は本気で銀に、
坂田 銀時に恋をしている。
【02 end】