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□鬼は臆病者に恋をした
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[side 土方]
期待でドッドッドッ、と浮かれはじめた俺の気持ちは、銀時の涙で一気に悲しく沈んだ。
「ふっ…ぅ、ヒック…、俺の事っ好きって言ったくせにっ…ヒック、何度フラれようがっ絶対に…諦めないって言ったくせにっ…土方のっ嘘つきっ!」
「おいっ……銀時、な、泣くなよっ…頼むから…」
銀時に泣かれると、困る。
好きな奴にはいつだって笑っていて欲しいものだと、いやと言うほど思い知らされた。
でも、そんな思いとは裏腹に、まるで幼い子供のように泣きじゃくる銀時を、愛しいと感じた。
俺なんかより よっぽど強いこの男を、ずっと、一生、守ってやりたいと思った。
それに、まるで夢のようで信じがたいが、こんな風に感情を爆発させた銀時に、俺の期待は、確信になりつつあった。
「………確認、させてくれないか?銀時(おまえ)は、俺がお前を好きなのと同じ意味で、俺を…、想ってくれてるの、か?」
そうであってくれるなら、これ以上は他に望むものは何も無い、と、今まで信じてこなかった神様という存在に、俺は祈りを込めた。
「だからお前に抱かれてやるって言ってんだろ!?ヒック…、俺の話っ聞いてなかったのかよ?」
ああ、神様。あんた、ちゃんと存在(いた)んだな?
「………いつ、から?」
ヤバい。声が震える。
嬉しすぎて、泣きそうだ。
「ヒック…、じっ自分のっ…気持ちを、ハッキリ自覚したのは…お前の噂が、流れてから。でも…多分もっと前から好きだった。
でも…俺、あんな風に土方にされたみたいに誰かに求められた事なんて今までなかったから、それが、信じられなくて、自分に自信が持て無くて…、素直に受け入れる事が出来なかった。
それなのに、そんな俺に何度振られても、変わらずに何度でもまた告白してくる土方を見て、それを嬉しく感じて、俺…いい気になってたんだ…。
ごめんっ…。ごめんなさいっ」
ま、まじかよ?
…マッ……マジでっ!!?
あんな噂、迷惑でしかなかったけど、役に立つじゃねぇか。
「でもっ今さら謝ったってもう手遅れなんだろ!?どうせお前もっ俺のものになんてならねぇんだろっ!?分かってんだよ!もういいからっ、さっさと振れよ!!」
「だ、だから泣くなって!」
銀時を何とか落ち着かせようと、俺は銀色のフワフワな後頭部にそっと手をやり、そのまま銀時の顔を自分の胸元に引き寄せた。
「頼むから、泣くな」
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