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□鬼は臆病者に恋をした
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「んな心配そうな面すんな。何のお咎めも無しだ」


「えっ、本当?」


「あぁ。実はな、見合い相手にも好きな人が居るんだってよ」


「そう、なの?」


「あぁ。正直に言ったんだ。俺には好きな人が居るって。片想いで、しかも相手は同性である男だけど、でもどうしても諦められないから貴女とは結婚出来ないって頭を下げたら…」


っ…そんな事してくれたんだ?どうしよう…ヤバい。嬉しい。


「そしたら、感動された」


「……感動?」


「あぁ。何て言うか、男に負けたって現実をつきつけて女のプライドを傷付けちまったんだ、ふざけんな、とか罵倒の一言、二言、ビンタの一つや二つでも喰らう覚悟はしてたんだが…、素敵だと思いますって誉められちまった。

実は、見合い相手の好きな人ってのがな、その彼女の家に支えてる執事なんだと」


「執事、さん?」


「身分違いの恋だからってんで、自分の想いを伝えるでも無く、その執事を諦める為に彼女は半ば投げやりで見合いしたんだってよ。でも、彼女曰く、俺の誠意ある告白に、自分は間違ってたって、執事を諦めない決意をしたそうだ。で、思い立ったが何とやらでそのままソッコーで彼女は父親に、自分には好きな人が居るから俺との見合いを中止にして欲しいってキッパリ言いに行ったんだ」


「……じゃあ…、彼女の方から断った事になったの?」


「あぁ。結果的に俺が振られた形になったからな。彼女の決意のキッカケを作ったのは俺だが、その真相は俺と彼女の二人しか知らねぇから…、彼女の突然のワガママと受け取られて、父親に謝られちまった。

本当の事を言おうとしたんだが、彼女に言う必要はない、自分のワガママという事で構わないからって、止められた。もしかしたら、俺の立場を気遣ってくれたのかも知れねぇな」


「……良い子だな」


「あぁ。本当、あの子が見合い相手で良かったよ。正直、助かったって思った。

今回の見合いがキッカケで銀時も自分の気持ちを自覚したって言うし、俺はあの見合いに感謝してる。………銀時は?」


「……臆病で、素直じゃない俺にとっては…良いキッカケだったと…思う。こうなった結果があるから言える事だけど…」


「いつになく素直じゃねぇか」


「だって!!

もう…後悔したくねぇんだよ…。お前の結婚の噂を聞いて、もう俺に構ってくれなくなるんだって思ったら、土方が俺じゃない他の誰かのものになるんだって思ったら…、凄く怖かった。あんな思いは、もうヤダ」


「っ…銀時」


っ…ダメだ。 泣いたりしたら、面倒くさいって、重いって思われるかも知れない。せっかくまだ好きだって言ってもらったんだから、嫌われる様な事はもうしちゃダメだ!


そんな事を考えていると、再び土方にギュッと、ギューッと力を込めて抱き締められた。


「大丈夫って言ってんだろ?
俺が銀時じゃない他の誰かのものになるなんて事、何があろうが…、例え天地がひっくり返ろうが絶っっっ対にねぇ!!

 銀時、俺の……恋人になってくれ…、なって下さい」


「っ…………」


胸が いっぱいで、


「………………はい」


そう答えるので精一杯だった。


「よっしゃ!!」


それはそれは嬉しそうに。幸せを、噛み締める様にそんな言葉が土方の口から発せられた。


そんな土方が可愛くて、俺は土方の腕の中でクスリと笑った。


俺も、幸せを噛み締めながら。



【end】



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