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□鬼は臆病者に恋をした
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中編




気づいてしまった土方への 自分の好きって気持ちを考えながら、なんの気なしに歩いていたら、いつの間にか真選組の屯所の前に到着していた。


「やべぇ、何でこんな場所(ところ)まで来ちゃったんだろ…」


もう今さら…手遅れなのに。


土方にバッタリ会ったりでもしたらヤダな。気まづい。


さっさとこの場を立ち去ろうと思い、今来た道を戻る為クルリと自分の体を方向転換させた、
その時───


「……万事、屋?」


「っ…」


聞き慣れた低音ボイスに呼び止められた。


「ぁ……よ…よぉ、土方くんじゃん。奇遇だね。あれぇ?何してんの?こんな所で」


「…何してるって、ここは屯所だぞ。俺が居ても当たり前だろうが。………万事屋こそ、こんな所で何してんだ?」


「俺は……ほら、あれだ…」


言える訳ないじゃん。
土方の事を考えてる内に、無意識に気付いたら来てた、なんて…。


あれ?なんかコレ俺、軽くストーカーっぽくないか?


ヤバい!ダメっ!そんなの!
絶対に気持ち悪がられるに決まってる。そんなのヤダ!!


「仕事帰りでさぁ今、たまたま通り掛かっただけだけど?」


ちょっと前までは、何かと理由を付けて土方の方が俺に会いに来てたのに…俺を追っかけてたのに…、俺が土方を振ってたのに…、今じゃ立場逆転だな…。


失恋したのは、俺の方みたいだ。


いや、みたいじゃないか。
失恋、したんだよな…俺は。


「じゃ…俺、疲れてるから、もう帰るわ」


歩き出したら、


「ちょっ…、ちょっと待て!」


また呼び止められた。


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