♂ ♀
□鬼は臆病者に恋をした
6ページ/15ページ
[side 銀時]
「ちょっ…、ちょっと待て!」
「………なに?」
このまま帰らせて欲しいと思いながらも振り向くと、土方は何か言いたげな表情ではあるが、暫くの間 無言で俺を見た。
その後、フイッと視線を外し、
「話が…ある」
そしてポツリと呟く様に口を動かした。
はなし?……あぁ、あれかな?
自分は結婚が決まったから、もう俺にしつこく言い寄ったりしないから安心しろ、とか律儀にも言ってくるつもりか?
ヤダよ。やめろよ。
直接そんな事言って、俺に最後のトドメささないでくれよ。
銀さんお前の前でもし泣いちゃったらどうしてくれんだよ。
カッコ悪いじゃん。
…………あぁ、でも、これも当然の報いなのかもな。
今まで散々、振られて傷ついてる土方を見て、それでも何度も告白してくる土方を見て、自分は愛されてるんだって、安心して、喜んでたんだから。
最後ぐらい、俺の方がボロボロに振られてやるのが償いだよな。
「…………話って、なに?」
「……………ここで話す様な事じゃねぇから……、ちょっと、俺に付いてきてくれるか?」
────
───
「なに?ここ…」
連れて来られたのは 高そうなマンションの中、あるひと部屋の扉の前だった。
「お前ん家?」
「いや、真選組の名義で借りてる。これでも立派な仕事場だ」
「へぇ?仕事ね。
こんな所でなにすんの?」
「ここは保護対象人物を匿う為の部屋なんだよ」
「保護対象人物?」
「あぁ。何らかの犯罪を目撃しちまった奴とか、加害者の身内とかで、被害者関係から復讐される可能性があるとか、まぁとにかく その身に危険がある人物を保護するんだ」
「へぇ…。真選組って、そんな事までしてたんだ」
「まぁ、んな事はどうでもいい。今はこの部屋使ってねぇから、誰も来ねぇ。周りを気にせず話が出来る。入ってくれ」
カチャカチャと鍵を開けながら言う土方の後ろ姿を見ながら、
「………うん」
俺は小さく返事をし、そして、
土方が中に入った俺の後ろ姿を、後ろ手でドアを閉め、静かに鍵を掛けながらジッと見つめていた事に気づかず、俺はブーツを脱いで廊下を進んだ。
俺と土方だけの、
二人っきりの密室の中に…。
後編へ つづく