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□鬼は臆病者に恋をした
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[side 銀時]



「ちょっ…、ちょっと待て!」


「………なに?」


このまま帰らせて欲しいと思いながらも振り向くと、土方は何か言いたげな表情ではあるが、暫くの間 無言で俺を見た。


その後、フイッと視線を外し、


「話が…ある」


そしてポツリと呟く様に口を動かした。


はなし?……あぁ、あれかな?
自分は結婚が決まったから、もう俺にしつこく言い寄ったりしないから安心しろ、とか律儀にも言ってくるつもりか?


ヤダよ。やめろよ。
直接そんな事言って、俺に最後のトドメささないでくれよ。
銀さんお前の前でもし泣いちゃったらどうしてくれんだよ。


カッコ悪いじゃん。


…………あぁ、でも、これも当然の報いなのかもな。


今まで散々、振られて傷ついてる土方を見て、それでも何度も告白してくる土方を見て、自分は愛されてるんだって、安心して、喜んでたんだから。


最後ぐらい、俺の方がボロボロに振られてやるのが償いだよな。


「…………話って、なに?」


「……………ここで話す様な事じゃねぇから……、ちょっと、俺に付いてきてくれるか?」











────
───


「なに?ここ…」


連れて来られたのは 高そうなマンションの中、あるひと部屋の扉の前だった。


「お前ん家?」


「いや、真選組の名義で借りてる。これでも立派な仕事場だ」


「へぇ?仕事ね。
こんな所でなにすんの?」


「ここは保護対象人物を匿う為の部屋なんだよ」


「保護対象人物?」


「あぁ。何らかの犯罪を目撃しちまった奴とか、加害者の身内とかで、被害者関係から復讐される可能性があるとか、まぁとにかく その身に危険がある人物を保護するんだ」


「へぇ…。真選組って、そんな事までしてたんだ」


「まぁ、んな事はどうでもいい。今はこの部屋使ってねぇから、誰も来ねぇ。周りを気にせず話が出来る。入ってくれ」


カチャカチャと鍵を開けながら言う土方の後ろ姿を見ながら、


「………うん」


俺は小さく返事をし、そして、


土方が中に入った俺の後ろ姿を、後ろ手でドアを閉め、静かに鍵を掛けながらジッと見つめていた事に気づかず、俺はブーツを脱いで廊下を進んだ。


俺と土方だけの、
二人っきりの密室の中に…。



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