07/08の日記

22:32
ハッピーバースデー (土銀と沖田)
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真選組副長である土方と、一番隊隊長である沖田は巡回の途中で万事屋、坂田 銀時とバッタリと出くわした。
ちなみに場所は甘味処の店先である。


「よぉ、お二人さん。
なに?巡回?大変だねぇ、このクソ暑いのにそんな真っ黒な隊服着ちゃって」


銀時は団子にパクつきながら二人を見上げた。


沖田は銀時を暫しジィッと見ながら何やら考える素振りをして、銀時の隣へと腰かけた。


「おい、総悟…」


なに休憩しようとしてんだ、と注意しようとした土方だったが、銀時の耳元に、彼にしか聞こえない様にとコソコソ話しかける沖田の姿に動きが止まった。


土方は、瞬間ムッと眉を寄せる。
自分が想いを寄せている銀時に簡単に近すぎるほど近づいた沖田が面白くなかった。


「へぇ〜そうなんだぁ」


土方が沖田に対してイライラしている間にも、秘密の話、の様な会話は続く。


「え、なに?」


ウザい程の目力を込め銀時と沖田(ふたり)を見るも、気づいていないのか、それとも気づいていてあえてスルーを決め込んでいるのか、二人は土方の方など見もしない。


「まぁ、そうだろうよ」


そして暫く続いた会話は、


「じゃあ、頼みまさァ」


沖田のその言葉で終わった様だった。


話し終えると沖田は立ち上がる。それに続けて銀時も立ち上がる。


何事かと土方が首を傾げていると、銀時がおもむろに沖田へと近づいた。


───そして


「っ……!!?」


土方は目の前の光景に、瞳孔を全開に開き、顔を真っ青に青ざめ、まるで、この世の終わり、という顔をした。


目の前の光景、とは…、
銀時が沖田の首に両腕を回して抱きつき、そのまま沖田の耳元で何やら囁いていた。というものであった。


ちなみに、囁いた言葉とは、


「沖田くん、ハッピーバースデー」


で、ある。
そう。今日、7月8日は沖田 総悟の誕生日であった。


「ありがとうございまさァ、旦那」


ニコリと微笑み礼を言うと、沖田は土方へと視線を移した。


そして、ぶはっと吹き出し笑う。


「くっくっくっ。思った通り面白い反応を見せてくれるお人だ、土方さんは。くくっ」


土方は未だ青い顔をして硬直していた。


沖田は懐から携帯電話を取り出し、それを土方に向けるとカシャリと写メを撮る音を響かせた。


それを見た銀時は思う。
これはまるで、自分が猫になってしまった時に沖田と遭遇し、同じく猫になってしまった桂とゴリラになった近藤と共に間抜けな姿を撮られてしまった時の様だと。


「あぁ〜面白いもんが見えた。じゃあ旦那、俺はこれで」


沖田は財布から札を取り出し銀時に渡すと、満足気に立ち去って行った。


小さくなっていく沖田の背中を見送ると、銀時は土方へと視線を移した。


そんな土方は、未だ硬直していて沖田がいなくなった事に気づいていない様子であった。


「おーい、土方くん。いつまで固まってんのぉ?君」


銀時のその呼び掛けに、ようやくハッとした様に再び動いた土方は、キョロキョロと辺りを見て口を開く。


「あ、あれ?総悟、は?」


「もうどっか行っちゃったよ?」


「そ、そうか…」


返事をした後、土方は俯き、一度口をギュッとつぐみ、そして恐る恐る開いた。


「……あ、の…、さ、さっきの、は…」


いったいどうして銀時が沖田に抱きついたのか…、しかも、そう!重大なのは銀時から、という点だ。ま、まさか、アイツの事が好きなのか!?
と、土方はパニック寸前である。


「さっきの?
あぁ。あれは誕生日プレゼント」


すると銀時はサラリとそう言った。


「誕…は?プレゼント?」


「うん。さっきさぁ沖田くんに耳元で話し掛けられた時にさ…」


そこで回想が始まった。


「旦那、実は俺、今日誕生日なんでさァ」


「へぇ〜そうなんだぁ」


「そこで旦那に折り入ってお願いがあるんですが…」


「え、なに?」


「ハッピーバースデー、って事で、今日は文字通りハッピーになりたいんでさァ」


「まぁ、そうだろうよ」


「誕生日プレゼントくだせぇ」


「俺にそんなもん買う金があると思ってんのか?今日の甘味処(ここ)の飲み食い代も困ってんのに。ツケだぜ?ツケ」


「別に金なんか掛かりやせんぜ?俺の頼みを聞いてくれるってんなら、今日のここの代金を俺が払っても良いですぜィ?」


「マジでか!?つうか、そこまでしてプレゼント欲しいの?君。寂しい奴だなぁ」


「ハッピーになりたいだけでさァ」


「ふ〜ん?で、俺は何やらされる訳?」


「なぁに、大した事じゃありやせんよ。ただ俺にギュッと抱きついて耳元で祝いの言葉を掛けてくれればそれで充分でさァ」


「は?なにそれ」


「そうする事により土方さんが嫌な思いをするんでさァ」


「は?そうなの?」


「えぇ。したがって、俺はハッピーになれるって訳です」


「………あっそぅ」


「引き受けてもらえやすかィ?」


「まぁ、そんなんでここの代金払って貰えるんなら。なにより誕生日だしな」


「じゃあ、頼みまさァ」


………回想、終了。


「って事があってよぉ」


銀時の説明に、土方は言葉を失う。


じゃあ何か!?俺への嫌がらせの為に銀時に金払ってまで抱きつかせたのか!!?


と、怒りを通り越し呆れる。


「しっかしアレだよな。土方くんが嫌がる事が沖田くんのハッピーって、どんだけあの子に嫌われてんの?可哀想に」


銀時の同情じみた目付きに、土方はうっ、とたじろぐ。


「……でさ、聞きたいんだけど…」


銀時は上目遣いで土方を見た。


土方はその可愛い姿にドキッとする。


「なんで俺が沖田くんに抱きつく事が土方くんへの嫌がらせになる訳?」


クリッとした真っ赤な瞳で見つめられ、そんな事を聞かれ、土方の心臓はドキドキドキッと高鳴るばかりである。


「そ…それは…その……」


動揺しまくる土方に、


「……………もしかして…さぁ、土方くん、好きなの?」


「っ…」


言い当てられ、ビクッとするが、


「沖田くんの事」


ズレている言い分に土方は全力で否定。


「ちげぇ!!」


続けて、


「総悟じゃねぇ!
俺が好きなのはお前だっ!!」


勢い余ってつい告白してしまう。


「あっ…」


言ってしまった後で土方は恥ずかしさから顔を真っ赤にして、そして後悔した。


言うつもりなどなかったのに。
自分の気持ちを知られ、気持ち悪がられたらどうしたらいい?避けられたら?


今までの様に、口喧嘩すら出来なくなってしまったら…、そんなの、耐えられない。


土方がそうなった時を想像し、ゾクリと背筋と心臓に寒気を走らせていると、


「………やっと告白してくれた」


銀時はそんな事をポツリと呟いた。


「………は、え?えっ?」


土方が目を丸め、訳が分からないと言った顔でハテナマークを頭上にいっぱい浮かべていると、銀時はフワリと、花が咲いた様にそれは綺麗に笑った。


「土方くんが銀さんの事を好きだってのは、バレバレだっつうの!」


「え、………………えぇっ!?」


綺麗で可愛い笑顔とそのセリフに、土方の心臓はドクンッと跳ねる。


「銀さんの事、好きで好きで仕方ないってんなら、良いよ?別に。付き合ってあげても」


「ふぁっ!?」


銀時の思わぬ言葉に、土方の口からは変な返事が出てしまった。


「………付き合わなくってもいいってんなら、ま、別にそれでいいけど」


途端にムッとした様に言う銀時に、土方は瞬時に声を上げた。


「よくないです!付き合って下さい!!ずっと前から好きでした!!!」


「……………………はい」


銀時はほんのり頬を赤く染め、嬉しそうに頷きながらそう返事をした。


ここに一組のカップル誕生。




【end】




(あとがき)


実は銀ちゃんも土方さんの事を好きだったって言うね。だから相手から告白して欲しくてわざととぼけてみたって言うね。

って言うかアレ?確かコレって沖田さんのハピバ記念小説だったはずじゃ…。
なのに何この、沖田さんプラス土銀ってより、まんま土銀って感じの仕上がりは。

ま、いいや←

まぁ、何はともあれ
沖田さん、ハッピーバースデー♪

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