02/14の日記

11:47
チョコくれ (高銀)
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[ 攘夷時代 ]





「なぁなぁ高杉くん、高杉くん」


それは戦から帰って来て晩の飯を済ませた時の事。高杉は自分に宛がわれている部屋に戻り、縁側で酒でも一杯、と荷物を探っているといつの間にやらやって来た白夜叉こと銀時が首を傾げながら喋りかけて来たのだ。


「……なんだよ‘くん’って。気持ち悪ぃな…」


「さっきさ、坂本から聞いたんだけどさ、今日ってチョコ食い放題の日なんだってよ!」


「…は?」


「うんとね『ばれんたいん でー』って言うんだってさ」


「あ?バレンタイン?…あぁ、あの異国の風習の。つうか、食い放題じゃねぇだろ。お前なに自分に都合よく変換してんだ」


「あれ?知ってたんだ?」


「まぁな。銀時(おまえ)と違って俺は世間ってもんを知ってるからな」


「(ムッ)俺が世間知らずだって言いてぇのかよ!?」


プクッと頬を膨らませる銀時に、高杉は内面でめちゃめちゃときめく。ドクンっと。


可愛い!可愛い!可愛い!
銀時、めちゃくちゃ可愛い!!


…と。


「知ってる方じゃねぇのは事実だろ? (箱入りなんだからよ) 」


小さい頃から、松陽にも、同年代である高杉にも桂にも、周りに居る者に銀時は大事に大事に甘やかされ育てられてきた‘箱入り男の娘(ハコイリムスメ)’な事は事実だ。


しかし、最後の言葉は言うと絶対に機嫌が悪くなるだろうから、と、高杉は思うにとどめる。


「ぅ〜…まぁ、いいや」


納得いった訳ではないが、話が進まないから、と銀時は気をとりなおし続ける。


「とにかくさ、チョコ!」


「…あ?」


銀時の言葉の意味が分からず高杉は眉を寄せ聞き返す。


「だから!今日はばれんたいんだろ!?だから高杉くん、俺にチョコくれ!!」


ニコニコ笑顔で自分へと手を差し出してくる銀時に高杉からはため息。


「…なんで俺がお前にチョコやるんだよ?」


「え?だって…」


高杉の質問にキョトンとした銀時は、次の瞬間、何でもない事のように口にした。


「坂本言ってたぞ?
ばれんたいんは好きな奴にチョコ贈る日なんだって。高杉、俺の事、好きだろ?」


「っ……」


なっ、な、な…、
なんでバレてんだぁぁあ!!?


目を見開き、高杉は心の中で絶叫。
ハッキリ言って、恋愛事とかそっち方面に関しては銀時は鈍感で、絶対に自分の想いなど気づかれていないと思っていた。というかバレてない自信があった。


なのに、なのに…、


「……お、お前…なんで…それ…」


知ってんだ?
最後まで言葉にはならなかったが、高杉が何を聞こうとしているのかは伝わったのか、銀時はその質問に答える。


「だって…、ちっちゃい頃、松陽先生に言ってたじゃんお前。『先生、おれ銀時の事が好きです。将来は結婚したいと思ってます。だから銀時の親同然である先生のお許しを下さい!』って、本人すっ飛ばして先に先生に話し通してたもんな」


アレを聞かれていたとは!つうか、そんな昔から自分の想いを知られていたのか!と、高杉は恥ずかしくなる。


「でもまぁ、その後、松陽先生に『例え好き合っていても男同士じゃ結婚は出来ないんですよ』って言われてお前、めっちゃ落ち込んでたもんな。
つうか、ぶっちゃけ泣いてたよな」


しかも泣きべそを見られていたとか!!高杉はもう赤面ものである。


「お前は俺が好き。でもって俺は甘いもんが好き。何かさ何かさ?ばれんたいんってさ、俺たちの為にあるような日じゃね?だからチョコくれよ。なぁ高杉」


…………知られていたのなら仕方がない。こうなりゃ開き直ってやる。


「……別にチョコぐれぇやっても良いが…、お前はいいのか?」


「…なにが?」


「バレンタインには、チョコを受け取ったら贈った相手と何がなんでも一生添い遂げなきゃいけねぇってルールがある」


こうなりゃ銀時を手に入れてやる!と、高杉はすぐにバレてしまいそうな嘘をつく。


「え、マジで?坂本そこまでは教えてくれなかったぞ? うーーー…ん…」


銀時は目を丸めた後、ほんの少しだけ悩む素振りを見せ、そして、


「ま、いっか。良いよ?」


アッサリと承諾。


「え、はっ?」


何がなんだか意味が分からず、高杉はポカンとしハテナマークを頭上に浮かべる。


「俺、別に高杉の事キライじゃねぇし、しょうがねぇから一生添い遂げてやんよ」


ニコッと笑う銀時に高杉の鼓動はドッドッドッド、とものすごいスピードで早鐘を打つ。


「お、お前…本当に意味、ちゃんと分かってんのか?一生を添い遂げるんだぞ?幼馴染みとか、仲間とか、腐れ縁としてじゃなく、恋人として、だぞ?」


「分かってますぅ!その意味が分からないほど銀さんそんなバカじゃありません〜!」


「ほ、本当に分かってんのか!?恋人だぞっ!?恋人!今までとは訳が違うんだぞ!?恋人なんだから、イチャイチャすんだぞ!?手だって繋ぐしキスだってするし、セックスだってするんだぞ!?俺とっ!」


そんな高杉の言葉に、銀時はずっと見ていた高杉から視線をプイッと反らした。


そして、


「……………好きに、すれば?」


ボソッと小さな声で呟く。


そんな銀時の耳は、首は真っ赤に染まっていた。


銀時のその姿を見て、高杉もボボボッと一気に全身を真っ赤に染め上げた。


そして高杉は思う。


あ、あれ?
もしかして…銀時(こいつ)ひょっとしたら ひょっとして、俺の事……………、


好き?


…と。
こうして2月14日というこの日、実は小さい頃から何気に両想いだった二人はようやく恋人同士になったのでした。





【end】




実は銀ちゃんは計算。
自分の事を好きなくせにいつまでも告ってこない高杉にシビレを切らし、坂本さんから聞いたバレンタインを口実にしてみました。銀ちゃんにしてみたら『チョコくれ』は何気に告白のつもりでしたとさ。

ハッピー バレンタイン♪

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