短篇

□pair cup
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とある日曜日。




「お兄ちゃーん!ルキアちゃーん!おやつですよー!!」
階下から遊子の元気な声と共に、甘い香りが漂ってくる。


 パタパタ…


 がちゃ


甘い香りが部屋中に広がった。

「今日はホットケーキだよ」
かちゃかちゃと音を立てながら、ホットケーキとコーヒーが小さなテーブルに並べられる。
「おお!今日はほっとけぇきか」
煌々したルキアの瞳がふっくらと焼けたホットケーキに注がれる。



 かちゃり



「ん?」

一護の視線がとある場所で止まった。

「あ」

それに習ったようにルキアの目も、とあるところで止まった。




いつもなら質素な客用のカップが、
ルキア用に使われるカップが変わっていた。

「これは…?」

まるでルキアの好みに誂えたかのような、白い陶器にウサギ柄のカップ。

「あ、それね。昨日、浦原商店で見つけたの。いつまでもお客様用じゃ失礼かなぁと思って」
「遊子…」
 少しはにかんで、ルキアがカップを眺めた。
「―――それはいいとして…なんで俺のカップが変わってるんだ」
よくよく見ると一護のカップまで、まるでペアのように黒い陶器のクマさん柄に変わっていた。
「あ、これはね…ちょうどいいカップがあったから、ペアで買ってきたの」



ペアのカップ…

まるでベタな恋人同士のような―――











「…さ、さあ。ほっとけぇきを食べようか!」
沈黙を破ったのはルキアだった。
「お?おう」

甘いシロップをかけたホットケーキをルキアは頬張った。
「ふん。ふぁい!」
熱いのか、口をモゴモゴさせてルキアは微笑んだ。
とりあえず一護は、コーヒーを飲もうとした。


 かちゃり


「………」

「………」



ほぼ同時に、手を伸ばしたルキアのカップが一護のカップにぶつかり、高い音を立てた。


「「………」」


―――気まずい。



「じゃあ、食べ終わったら片付けにきてね」



いそいそと遊子はドアの向こうに消えていった。





「………」

「………」
 
 
 
 
 
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