黒崎一護は悩んでいた。

後数時間で訪れる、大切な記念日。
普段より一層険しく眉間に皺を寄せ、思案する視線の先にはシンプルな包装に包まれた小箱。

とにかく悩んでいた。
その鋼鉄製の理性が邪魔しながらも懸命に。しかも数週間前からというのだから、この少年の理性はいかほどの硬度なのだろう。

今更なのだろうか?
忘れもしない、晴れて想いが通じた日。
初めてデートした公園。
初めてキスした夕暮れ。
巡らせば巡らせる程、思考は混迷を極めた。

思い切って。
…それが容易く出来るものなら瞬間、微風に浚われる埃の如く理性は崩壊しているだろう。要は決心とタイミングの問題。彼女に接してきた今までの経験と認識がそう告げている。


不意に気付くと、時計は真夜中の頂点で重なり合おうとしていた。未だ結論が出ぬまま、一護はベッドに潜り込む。
今夜はろくに眠れないと知りながら。
 
 
 
 





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