散文・詩

□慟哭
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いろいろなものに出会いました。

最初の出会いはすごく病弱な狐でした

狐は今にも崩れそうな声をして

訴えかけるのです。この世界が嫌いと

きっとこの狐は世の苛立たしさに

衰弱していたのでしょう

私はその狐を抱いてやりました。

ただ飼ってやるという無責任なエゴイズムな

選択は私にはできません。

けれども見捨てることもできません。

だから抱いたのです。

狐の鉤爪に気づ付けられても

抱きました。

そして、笑って狐と別れました。

次に会ったのは猫でした

よくよく飼いならされた黒猫でした

黒猫は好きな野良猫がいました。

その猫は傷だらけのやはり黒猫でした。

飼い猫は、野良猫のその勇敢さだとか

知慮めいた雰囲気を好きだったそうです

野良猫は、飼い猫のその純粋な素直さに

惹かれたそうです。

しかし、野良猫と飼い猫では住む世界が

違うのだそうです。

飼い猫の主人が云いました

そして、愛では解決できないものもあると

ぼそっといいました。

主人もどこか愛に縛られていたのです。

私はただ一人一人彼らの話を静かに聞いてや

りました。

また笑って彼らと別れました。

私は怖くなりました。

たくさんの者に出会ってたくさんの愛を

知ったからです

私はあの狐のように

理想の世界を愛するが故に、

現実との差に苦しんだり

あの猫らや猫の主人のように愛によって

縛ったり、縛られたり

に耐えられるわけがないからです

そんな時です。

私は、少女に出会いました

少女は私が経験してきたようなことに

苦しんでいました

だから私は自分の経験してきたことを少し

話しました。

もちろん、少女を笑わせるためです

少女は静かに聞いてくれました

しかし、話してはくれませんでした

私はなぜ話してくれないのか考えました

気づけばだいぶ考えていました

えも私はまた恐怖しました。

最大の恐怖です。

必死に冷静を装って心を閉じました

けれどもそれも終わりです

物語の最後のページに文字を書くよりも

物語の白紙のページに文字を書く方が

面白いということに気づいたのです。

だから、私は物語の最初の一ページに

Ich lieben と書いたんだ

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