壱
□泣きたいトキには
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秋だった。
俺様が最後に泣いたのは。
10歳の秋だった。
その時、なんで泣いたかなんて覚えちゃいない。ただ、あれ以来泣いてない事は覚えてる。
悲しい時も、辛い時も、泣いていなかった。
ただ、我慢していただけ。
忍になって、里を出て、泣きたい日だってあったのに、涙は一滴も出なかった。
俺様は泣くことを忘れた。
涙の出し方がわからなくなっていた。
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━ある日の午後。
俺様はそっと城を出た。理由なんてない。
ただ、散歩気分で城を出た。
静かだった。夜でもないのに、あたりは静まり返っていた。
カサッ―…
『よぉ。忍さんよ』
ニッコリと笑う竜がいた。
「竜!!今日はどうしたの??こんなとこまで来て。」
俺様は竜のもとへと駆け寄った。だけど、いつもの竜と違うことくらい察してた。
「・・・竜???」
『・・・・。ッ悪りぃー!!ボーとしてた;』
「・・・そっか。」
何かに悩まされているのか、竜の顔は冴えなかった。
「なぁ、竜。」
『Ah??』
「なにしに...来たの??」
疑ってるわけじゃない。ただ竜の様子が変だから。気になってるだけなんだ。
『・・・。そ、そんなことより...散歩でもしねぇか??』
「・・・うん。」
まんまと話を変えられた。相当、言いたくないらしい。
歩いて数分。
ついた場所は、特にこれと言って素晴らしい場所ではなかった。
ただ、花が一面に敷き詰められていて、空がすごく綺麗に見える丘だった。
何のために、竜が俺様を連れてきたのかまったくわからないが、
竜の顔が少し柔らかく見えた。
「竜??」
『ココよ。俺が初めてお前のトコに行った時に、立ち寄った場所なんだよ。』
竜が初めて、俺様に会いに行った時に立ち寄った場所・・・
『この丘から見える景色がすきでな。
ずっと忘れられないんだ。』
村からちょっと離れた小さな丘。
長年この地に居たというのに、まったくこの丘の存在を知らなかった。
それを、竜がみつけた
「うん。本当にきれいだね。」
そう返すと、竜が小さく微笑んだ。
『忍よォ。』
「??ん??なに??」
『お前に言わなきゃならねぇことがあんだよ・・・。』
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