T&B

□ストーカー編よん
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「おでこが少し切れているわね。でも、ここなら前髪でちゃんと隠れるわ。
あと、手首を捻っているから暫く体育はお休みしてね。」

騒ぎになった割には軽い怪我で良かったと英は胸を撫で下ろす。
手首に軽く巻かれている包帯が少し痛々しいが、病院行きにならなくて良かった。

「はい・・・」

「もう少し休んで、落ち着いたら家に帰りなさい。
親御さんに連絡はつくかしら?」

「あの、今出張中でシュテルンビルトにいないんです・・・」

「参ったわねぇ・・・」

「じゃあ、プロッサーさんが良ければ俺が送ります。」

「あら、素敵な紳士ね。」

「お言葉に甘えます。お願いします、蔵前君。」

リェナは安心したように、ふにゃりと笑う。
英もそれに微笑み返した。
リェナは友人に鞄を持ってきてもらったが、英のは手元にない。
英は鞄を取りに、自分の教室に向かった。
音楽系の部活が練習している音が校内に響く。
教室には電気が点いていた。

「あれ、カリーナ?」

たった一人、ぽつんと椅子に座っているのはカリーナだった。
数学のテキストを開いて、勉強しながら英を待っていたのだ。

「英の鞄があったから」

「待っててくれたんだ、ありがとう。」

「っ、英はもう帰るの?」

「あーっと、プロッサーさん送ることになりまして。」

「一人で?」

「はい。」

「私も行くから。」

「カリーナ用事あったんじゃないのか?」

「それが用事よ!」

その時、ビービー、とカリーナの手首にあるPDAが突然鳴り始めた。
英は一度、カリーナと出掛けた際にこれを聞いていた。
カリーナは苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
何でいつも、肝心な時に邪魔をする。
英は苦笑して、カリーナの荷物を纏めた。

「前と同じ大事なやつだろ?
俺なら大丈夫だから、待っててくれてありがとな。」

「身の危険を感じたら、すぐに連絡しなさいよ!」

「俺は女の子か。」

「分かった!?」

「了解であります。」

英に「行ってらっしゃい」と見送られ、カリーナは学校から走って出る。
すぐにポーターを手配してもらい、スーパーヒーロー“ブルーローズ”がシュテルンビルトを駆ける。
HERO TVの中継も始まり、夕陽に染まるシュテルンビルトが街中のモニターに映された。


『さあ!始まりましたHERO TV!
今回はハイウェイで起きた玉突き事故です!漏れた燃料により火災も発生中!
まだ現場には、取り残されているドライバーもいるとのこと!
ヒーロー、間に合ってくれ!』


モニターに映るのは、ヘリコプターから撮られた上空からの映像だ。
黙々と上がる煙が、事故の大きさを物語る。
消防車が消化活動をしているが、中々消えてくれない。

『おぉーっと!
ここで現れたのは、頼みの綱ブルーローズだあ!』

舞う雪のエフェクトと共に、現場にブルーローズが到着する。
更に、パワー系ネクストであるタイガー&バーナビーも到着した。

「私が炎を消すわ!」

「俺らは被害者の救出だ、行くぞバニーちゃん!」

「バニーじゃありません、バーナビーです!」

ブルーローズは消防車にも下がるように伝えて、タイミングを図って一瞬でその場を氷漬けにする。
漏れた燃料も凍らせて、救助活動に支障をきたさないように配慮した。
あくまで凍らせたのはそこと燃えている部分だけ。
取り残されている市民までは凍らせないように気をつける。
炎が消えたと同時に、タイガー&バーナビーは五分間の“ハンドレットパワー”を開始。
車から次々と救助していく。
スカイハイを始めとする他のヒーローズも到着し、全員で救急車へ運んだ。
中にはたくさん血を流している人もいるが、死亡者がいないことが奇跡だった。

「ブルーローズ!」

担架に乗せられた女性がブルーローズを呼んだ。

「炎が目の前にあって、私、もう死ぬかと思ったの。
でも周りが冷たくなって、あぁブルーローズが来てくれたんだって・・・ありがとう、命の恩人だわ!」

ブルーローズはニコリと微笑むと、あの名台詞を女性のために放った。


「私の氷はちょっぴりコールド、あなたの悪事を完全ホールド!」


ハイウェイで起きた大救出劇。
一番の功労者であるブルーローズに、シュテルンビルト市民からの溢れんばかりの拍手が送られた。
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