T&B
□ストーカー編ろく
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英はリェナによって再びベッドの上に戻される。
足の拘束具の鎖を調節しているようで、身動きはほとんど取れない。
仰向けに寝かせられたので、手錠が手首に食い込んで仕方ない。
「これで良し!英君たら可愛い!こんな風にされても、必死に動こうとするなんて。」
「何なんだ、この部屋は!写真だって・・・盗撮したってことだよな!?」
「そうよぉ?ねぇ英君、やっぱり背中で一纏めだと腕が痛そうだから、手錠着け直してあげるわ。ちょっと眠っていてね。」
「何ッ!」
布が英の鼻と口を覆う。
息を吸った瞬間、頭がボーッとしてきて境界線が歪む。
英は再び眠りに落ちた。
英が次に目覚めると、頭がずきずきと痛むのを感じた。
先程の白い布には眠り薬でも含んであったのだろう。
未だに頭がはっきりとしない。
この状況を恐ろしく思い身震いが、と思ったら寒さを感じだけだった。
英が自分を見ると、上半身が裸になっている。
寝ている間に脱がされたのだ。
下は制服のスラックスのままなので、少し安心した。
手足と首の拘束具は変わらず付いていて、鎖が擦れる音がする。
ただ少し違うのは、腕が頭の上で拘束されていることだ。
「おはよう英君!」
「・・・」
「酷いよ英君、彼女が挨拶しているのに無視するなんて。」
「・・・俺に恋人はいない。」
そう英が答えた直後、リェナの拳が英の腹に深く沈む。
突然かかる力の強さに、英は低く呻き声をあげた。
リェナの手は英の腹を抉るかのように、強い力で押し続ける。
「痛いよね、英君。」
「誰、が・・・!」
「だって悪い子にはお仕置きするのが普通でしょ?英君は今悪いことしたもの。これはお仕置き。もうしないって誓える?」
ドスッと鈍い音を立ててもう一発。
腹に力を入れても、リェナはゴリゴリと拳を沈めてきた。
「わ、かった・・・から!」
「いい子いい子!」
リェナはすぐに手を離した。
英は荒くなった息を整え、リェナを見る。
彼女はどうやら相当“キテ”いるのではないか。
目の色が違う。
リェナは英の頭を撫でながら、穏やかな口調で話し始めた。
「私ね、ネクストなのよ。」
「・・・は?」
「ネクストってだけで特殊なのは分かっているけどね、能力も不思議なのよ。」
リェナの体が青く発光する。
英は初めて見たネクスト能力の発動に息を飲んだ。
「“自己の存在を他者に認識させる”、これが私のネクスト。ちなみに逆のことも出来るのよ。おかげで高校にも簡単に入れちゃった!もう一度制服着るなんて思ってなかったもの!凄く嬉しかったの。」
嬉々として話すリェナ。
英は全てを理解した。
英は何も知らないのに、フレディ達があんなに詳しく彼女を知っていた事と辻褄が合う。
フレディ達は皆、否、あの場でリェナ・プロッサーを知っていた者が皆、リェナの術中にはまっていたのだ。
ここまで分かった所で新たな疑問が生じる。
何故、自分だけは能力の影響下にいないのか。
リェナは英の困惑した表情を見ると、満足そうに口角を上げた。
「私のネクストは万能じゃないの。これはね“非ネクスト”にしか通用しない能力なのよ。」
ここまで言えば分かる?とリェナは首をかしげる。
「つまりネクストには私の力は効かないの。存在が認識されることもない。だから、私のことを全く知らなかった英君は・・・」
―ネクストだよね、そうでしょう?―