過去拍手

□May
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五月もやっぱり刹那さん
(拍手だけど切ないよ!)





地上のとあるホテルにて

彼女はふいに真夜中に目を覚ました。
むくっとベッドから起き上がり、カーテンを勢いよく開けた。
朝日のような眩しい光ではなく、淡くて寂しげな月の光が射し込んでくる。
彼女の目に飛び込んでくるのは、大きな丸い月とその隣に咲く大きな宇宙の花。
目頭がつんと熱くなって、彼女は慌てて目を擦った。
ソレスタルビーイングに所属する彼女は、ものすごく久々の休暇を地上で過ごしていた。
それで良かった。
宇宙に居ると、いつも彼を思い出してしまう。
だから地上に来たというのに、宇宙に居たときよりも彼を思い出す。
黒い髪の毛も、褐色の瞳も、彼なりの不器用すぎる優しさも。

「刹那・・・」

分かっている。
刹那は、自分で望んで遥か彼方、エルスとの対話に向かったのだ。
彼女に、彼を責めることなど出来はしない。

「駄目だね、私は・・・刹那が居なくても泣かないって決めたのに」

宇宙の花を見てると、無性に刹那に会いたくなる。
瞳から落ちる涙を拭い、彼女は乾いた笑いをこぼした。


【いつ死んでもおかしくない】

【そんなの、ちゃんと分かっているよ】

【いつかは、俺とお前も離れ離れになる】

【そうだね・・・】

【お前が居なくなったら、俺は寂しくて死ぬだろうな】

【死ぬって・・・!】

【冗談だ】


何が冗談だ、よ。
と彼女は居ない彼に悪態をついた。
刹那が寂しくて死にそうなのは私の方だ。
みんなと居れば平気なのに、一人でいるときに刹那を思い出すと苦しくなる。

「会いたいよ、刹那・・・」

会って、こう言うのだ。
今までは言われてばかりだったが、彼女から言って刹那を驚かせるのだ。
どんな顔をするのだろう。
ポーカーフェイスを極め込む彼の慌てる表情を是非見てみたい。
そしてその後、いつもと変わらない優しい笑みを向けてほしい。


「誰よりも愛してる」


人を愛する喜びを教えてくれたのは、あなただった。






2011.05.05
 

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