過去拍手

□食欲の秋
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秋ですね、食べ物が美味しいですね。
そんな感じで思いついた黒バス紫原君夢です。




身長が二メートルを超えている大男の彼は、圧倒感が凄い。なんだか見ているこっちが、何もされていないのに押しつぶされてしまいそうになる。そんな感じで彼、紫原敦君に呼び出された私は、彼を見上げていた。身長差が五十センチ近くあるので、私は首が痛くなる。敦君は、私に目線を合わせるために屈むなんてことはしない。目線を合わせるために、抱き上げるのが常だった。まあ、そんなことは二人っきりの時にしかしないけれど。

「お腹減った。」
「会ってすぐそれですか。」

私はふう、とため息をついた。彼に振り回されるなんて日常茶飯事だから慣れているけど、と自分に言い聞かせる。駄菓子をぼりぼり頬張っている敦君の口元にお菓子のくずが付いていた。子どもだ。大きな大きな子ども。彼といつも一緒に居る氷室君は本当に凄いと思う。扱いに長けている、と言った方が良いかもしれない。そんなことをこの前氷室君に言ったら、「敦と付き合っている君の方が凄いよ」と言われた。それでも私は、彼を制御し切れた事なんて一度もない。

「お菓子付いてるよ。」
「んー、取ってー」

ずい、と近づけられた顔。私は口元の菓子くずを親指でぴっと拭った。そうしたら、何故か敦君は不満な顔をしている。

「何?」
「ぺろっと食べてくれるかと思ったのに。」
「んなことするわけないでしょ。」
「むー」
「むー、じゃない。」

このまま話していてもぐだぐだになりそうなので、私は敦君を追い越して歩いていく。早歩きしても、足の長い敦君はすぐ追いついてくるだろう。ほら、そんなこと考えている間にも私を追いかけてくる足音がする。

「ねぇねぇ、」
「今度はな」

に、と繋げる前に私の唇がふさがれる。それは一瞬の出来事だったけど、私の頭を沸騰させるには十分だった。真っ赤になった私を見て、敦君は一言。


「奪っちゃったー」


可愛く言ったって、許さないからね。私は口元を押さえながら楽しそうな敦君を見ていた。

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