School Of Fate

□神父と女子高生
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たった一人の従兄、言峰綺礼とはあまりいい思い出がない。
小さい頃は優しかったと思うが、何かと苛められた記憶がある。
嫌だと言ってるのに激辛料理食べさせられたこととか、遊園地でギネス級のマシンに無理矢理乗せられたこととか。
そして不覚にも、奴は同じ高校の公民教師であるのだ。
全く、人生とは理不尽だ。

これだけならまだしも、しおんには最大の難関が迫っていた。
まさかまさかの彼との同居である。
両親が単身赴任で日本に居ないから仕方ないのだが。
高校生だから一人暮らしくらい大丈夫だとしおんは言ったが、両親は納得しない。
彼らは相談した後、しおんの従兄に彼女を預けることを決めた。
教職に就いている=立派という短絡的な思考をどうにかしてほしかった。
しかも、従兄は従兄であっさり了承したとかで。
現在、彼が住む冬木教会の目の前に立つしおんは肩を落としていた。



「綺礼と同居なんて絶対に無理!
せめて籬正おじさんが生きていればなぁ・・・」

籬正おじさんは、数年前に不慮の事故で亡くなってしまった。
優しかったおじさん、せめてあなたさえ居れば耐えられたのに。
ため息をつくしおんの後ろから、一つの足音が彼女に近づいていた。

「早い到着だったな。」

「っ、綺礼!」

しおんは突然かけられた声に驚いた。
その反応を見た綺礼が笑ったような気がして、とても不服に思う。
一方の綺礼はしおんが持っていた大きなバックを持ち、教会の裏へ向かう。
その奥が、綺礼の住んでいる家なのだ。

「荷物・・・」

「早く来い。置いていくぞ。」

「あ、待って!」

父親が神父様だったせいか、それともこの男の真性なのか、たまに紳士的な面を見せる。
しおんは綺礼に置いていかれないように、小走りで彼の背中を追いかけた。



家の玄関から入り、使える部屋と風呂などを案内される。
しおんが使う部屋は既に整頓されており、先に運んでおいた荷物もそこにあった。

「掃除はしておいた。後は自分で好きにしろ。」

「うん。分かった。」

昔の意地悪さはどこへやら。
しおんは綺礼に対して、先ほどのような気持ちを抱いていなかった。
人間月日が経てば変わると言うのは嘘じゃないらしい。
しおんはあることを思い出し、持っていたバックを漁る。
従兄とはいえ、厄介になるのだ。
しおんが綺礼に差し出したのは、銘菓の箱だった。

「これからお世話になります。」

「あぁ、よろしく。」



夕方
荷物の片付けが終わって一息ついていた頃、綺礼がしおんを呼んだ。
ダイニングに行けば、立派な夕食が並べられている。

「これ全部綺礼が作ったの?」

「あぁ。」

しおんも(家庭科部所属だし)料理はする方だが、負けた感じがした。
聞けば、毎日食事が摂れるときは必ずこうしていると言う。
椅子に座り、おかずの麻婆豆腐を食べれば、ピリリと山椒が効いている。

「美味しい。」

「しおんを預かることに決めたのは、お前にも家事を手伝ってもらうからだ。
朝食と夕食を毎日用意しろ。」

「(命令形・・・)いいけど、綺礼みたいに上手く出来ない気がする。」

「家庭科部だろ。何とかしろ。明日からだ。」

綺礼はそれだけ言うと黙々と箸を進めた。
居候の身となったしおんは、彼に対して何かを言える立場ではない。
素直に頷き、食事を進めた。







神父と女子高生
(油断は大敵)



 

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