School Of Fate

□我様系同居人と風呂桶
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夕食の片付けは綺礼としおんで行なった。
食器や調理器具の場所を覚えるためである。
明日の朝食は何にしようか考え、ふと冷蔵庫を開けた。
何やら辛くするための調味料や具材ばかりで、従兄の食生活が不安に覚えた。
辛いものは美味しいし、確かに健康にいいこともあるが、摂りすぎは良くない。
本日の麻婆豆腐もしおんからすれば辛いのだが、綺礼からすれば甘かったらしい。
明日から頑張ろう、しおんはそう決心した。

「風呂の準備が出来た。先に入れ。」

「(また命令形)一番風呂もらっていいの?」

「私の後がいいのか。」

「お言葉に甘えます。」

そそくさと部屋に戻り、入浴の準備をした。



脱衣所で衣服を脱ぎ、扉を開けて浴室に入ると、浴槽からは温かい湯気が立ち上っていた。
まるで温泉のような石畳の床はひんやりと冷たい。
体を先に洗ってから、湯船に浸かる。
じんわりと染みてくる温かさが気持ちよくて、しおんはほころんだ。

(家のお風呂より立派。お風呂だけなら、ずっとここでもいいかも。)



しおんがのんきにお風呂で寛いでいる頃、一人の男が家に帰ってきた。

「遅かったな、アーチャー。」

「時臣の奴め。数学ごときで何を熱くなっているのやら。」

アーチャーことギルガメッシュ・ウルク。
彼もまた諸事情により、冬木教会に厄介になっている者の一人だ。
つまりは居候である。

「お前は三年生だ。数学の単位が取れなくて卒業出来ないのは困るだろう。」

「ふん。それより夕餉だ、綺礼。」

「無い。」

「は!?」

ダイニングの椅子に座ろうとしたギルガメッシュは勢いよく立ち上がる。
その顔には怒りの色が滲み出ているが、綺礼は臆することなく淡々と答えた。

「無いものは無い。」

「何故無い!?」

「今日から同居人が増えるんだが、材料が二人前しかなくてな。」

「それ完全にお前の過失だろ。
しかし、雑種風情が我(おれ)に挨拶もないとはな。奴は今どこだ。」

「入浴中だ。アーチャー、くれぐれも・・・」

綺礼がギルガメッシュを見たとき、彼は既にダイニングから姿を消していた。



「雑種が、我の夕餉を食らうとはいい度胸をしている。」

ドスドスと足音を立ててギルガメッシュは廊下を歩いていた。
夕食を食べられた怒りはどうやって収めようか。
やはりここは、雑種に自身の威厳を見せつけなければ収まらない。
ギルガメッシュは歪んだ笑みを浮かべた。
脱衣所の扉を乱暴に開けると、曇りガラスの向こうからシャワーの音が聞こえる。



「頭が高いぞ、雑種!!」



しおんは開いた口が塞がらなかった。
シャワーで泡を流していた時の出来事だった。
突然開いたガラス戸の向こうから現れた金髪の男が、大声を出したのだ。
しかも雑種とか言われた。
これに驚かない人がいたら会ってみたい。
とりあえず、震える手で手元の木製の桶を掴み、思いっきり投げた。

「ひぃぎゃああああああ!!
きれーきれーきれー!!ヘルプミー、助けて、不審者、きれー!!」

しおんは桶以外にも、石鹸、シャンプーボトル、タオルなどを投げて叫び続けた。
しかし、そのほとんどはギルガメッシュに避けられてしまった。

「お、女!?それにしては貧相だな」

ギルガメッシュは遠慮も躊躇いもなく、浴室で喚くしおんに近づく。
前は手で隠しているとは言え、近づかれたら裸を直視されてしまう。
(既にされているが)

「貧相ってゆーな!」

「口の聞き方には気を付けろよ雑」

“種”と続けようとしたギルガメッシュの体が前に倒れる。
意識を飛ばした彼の背後に立っていたのは、しおんが呼び続けていた人物だった。
やれやれとため息をつく綺礼の手にはバスタオルがある。

「すまなかった、一歩遅かったな。
とりあえずこれで体を」

「きれー!!」
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