神を呪って死んでしまえ

□05:参集
1ページ/4ページ

「何を考えてやがりますか!この馬鹿!」

戦車(チャリオット)に乗っていた少女のような少年が情けない声でライダーに怒る。
彼の手は、しっかりとライダーのマントを握っていた。

「五月蠅いぞ、坊主!」

「いひゃい!」

思わずしおんは自分の額を隠した。
征服王が彼のマスターと思しき少年に、強烈なデコピンをお見舞いした。
見るだけで痛々しい。
そんなしおんに気付いたらしく、征服王は彼女を見てカッカッと豪快に笑った。

「そこの見目麗しい華は、どちらのマスターだ?」

「俺の主だ。」

ランサーはその場から飛び上がり、しおんをライダーから守るように彼女の前に立つ。
ランサーのその行動に、ライダーが満足そうに頷いていたのは、彼のマスターである少年のみぞ知る。
また、少年ウェイバー・ベルベットとしおんには本人達も知らない因縁があるのだが、それはまた別の機会に。

「主、どうか私の元から離れないように。」

「分かった。」

ランサーはしおんの腰に腕を回すと、そのまま抱えあげる。
先程と同じ場所までジャンプして戻った。


「うぬらとは、聖杯を求めて相争う巡り合わせだ。
まずは問うておく!うぬら、一つ我が軍門に下り、聖杯を余に譲る気はないか!
さすれば、余は貴様等を朋友として遇し、世界を征する隊列を共に分かち合う所存でおる!」


バッと両手を高く上げる征服王イスカンダルことライダーは、高らかに言った。
しばしの静寂が支配したが、それを破ったのはランサーだった。

「その提案には承諾しかねる。
俺が聖杯を捧げるのは、今生にて誓いを交わした新たなる君主ただ一人。
断じて貴様などではないぞ、ライダー!」

ランサーの瞳が鋭くライダーを射貫く。
その視線は殺気のようなものを孕んでおり、ライダーのマスターは縮こまった。

「そもそも、そんな戯れ言を述べ立てるために、貴様は私とランサーの勝負を邪魔立てしたというのか。
騎士として、許し難い侮辱だ!」

セイバーも、ランサーと同じように鋭い視線をぶつける。
一筋縄ではいかない二人の英霊に、ライダーはポリポリと頭を掻いた。
征服王イスカンダルの軍門に下るというのは、それだけで誉れ高いことだというのに。
だが、ライダーの心中を二人の英霊は理解できない。

「う〜ん、待遇は応相談だが?」

見せたジェスチャーは、金銭を意味する物だった。

「「くどい!!」」

セイバーとランサー、二人の騎士の声が重なる。

「重ねて言うなら、私も一人の王としてブリテン国を預かる身だ。
いくら大王といえど、臣下に下るわけにはいかん!」

「ほう、ブリテンの王とな!
これは驚いた!名高き騎士王がこんな小娘だったとは!」

豪快に笑うライダーに対し、セイバーは眉をひそめた。
宝剣を握る右手の力が、自然と強くなっていることにアイリスフィールは気がつく。
そしてランサーとしおんから見ても、彼女の中に怒りが湧いてきているのは一目瞭然だった。

「その小娘の一太刀を浴びてみるか、征服王!」

「こりゃ交渉決裂かぁ。勿体ないなぁ、残念だなぁ。」

「ライダー!このバカバカバカバカぁ!」

ウェイバーはライダーの大きな体躯をぽかぽかと叩き続ける。
その大きな瞳には涙が滲んでいた。
マスターとしてライダーを完全には制御できていないようだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ