神を呪って死んでしまえ

□06:キャスター討伐
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翌朝
数時間程度の睡眠が取れたしおんは、カーテンを開けて朝日を拝む。
一応身支度を整えたしおんは、実家へ電話をかけた。
召還したサーヴァントのこと、協力してくれている黒川陽のこと、そして戦いのこと。
電話越しの父親は、相づちを打ってしおんの話を丁寧に聞いてくれた。

『金の工面の心配はいらない。存分に戦ってくれ。』

「うん、ありがとう。あの・・・」

“なつめは?”
そう言いかけて慌てて口を閉じた。
弟の話をするのは、父親に対して何だか悪い気がしたからだ。
聞きたいけれど、聞けなかった。

『どうした?』

「あ、えっと、イギリスのお父さんの知り合いの人にお礼伝えておいてね。」

『あぁ、分かったよ。』

「じゃあ、また。お母さんにもよろしく。」

『頑張れよ。』

受話器を静かに置く。
はあ、と大きく息を吐いた。



娘からの電話を嬉しく思いながらも、番号を押すのは心底嫌に思われた。
しおんの父は、時差を知っていながらも既に夜更けであろうイギリスに電話をかける。
数回のコールの内、目当ての人物が電話に出た。

「久しぶりですね、アーチボルト君。」

『これはこれは。こんな夜中に電話をかけてくるなんてね、ミスター久津見。
一体何の用だ。』

「娘の伝言だよ。
召還用の触媒についてさ。礼を伝えてくれと言われてね。」

『ご息女が喜ばれて何よりですよ。』

ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。
魔術の最高学府と称しても違わない“時計塔”講師を勤める天才魔術師だ。
久津見とは彼の祖父からの付き合いであり、良好な関係を築いている。
というのは表向きで、互いに才能ある魔術師を生みだしてきた名家として競い合っている。
故に仲は険悪な物であった。
特に、マスターに選出されると期待されていたケイネスは選ばれず、才はあるが名はない小娘にその席を奪われた。
この事実が両者の溝をいっそう深いものにした。
しおんが使った触媒は、元はケイネスが用意した物。
その触媒も予備として用意した物であり、本命は時計塔の学生ウェイバー・ベルベットが持ち出してしまった。
あれさえあれば、自身が聖杯に選ばれていたかもしれないというのに。
ケイネスの言葉には、節々に棘が見受けられた。
しおんの父も、それを分かりながら話していた。

『どうか命だけは落とさぬように。死んではどうしようもありませんからね。』

「お心遣いどうも。では失礼します。」

ガチャン、と同時に電話が切られた。
それに気がついたのか、妻が後ろから現れた。

「あの子は大丈夫かしら?」

「きっと大丈夫さ。どんな英霊であっても、対魔術師戦となれば、必ず勝機はある。
問題は聖杯にかける願いだ。きっと・・・」

「“お蔵入り”したなつめを家に戻すこと、呪いを無効化することでしょうね。」

「あぁ、きっと。私たちの悲願だよ。」
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