HellO!!

□いち
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一人につき一台の携帯電話
それが当たり前になった時代。携帯電話向けのビジネスが急速に大きくなった時代でもある。携帯のアプリに、暇潰し用のゲームサイトなど様々だ。もはや、携帯電話無しでは生きられない、そんな時代のお話。



鞍馬凛は、中部地方に住む普通の男子高校生だ。一応、地元では有数の進学校に通っている。彼もまた、例に漏れず携帯電話を所有している人間だった。携帯電話の需要は、連絡手段としての需要は圧倒的に田舎の方が高いだろう。何故なら、最寄り駅は家から三十分かかるし、電車は一本逃せば最悪一時間は来ない。そういう環境にいるので、携帯電話は必需品なのだ。

「なぁなぁ、探偵ホームズのアイテム交換しようぜ!」
「ラッキー!アバターの服ガチャレア物出た!」

全くくだらない、と凛は鼻で笑った。ここは高校の教室。休み時間のため、ほとんどの生徒が携帯を片手に友達と談笑している。凛はメールマガジンをチェックし、携帯を畳んだ。

「凛、おはよう!」
「おはよう」

話しかけてきたのは、花山千里、凛の友人だ。彼は携帯の画面を凛に見せる。

「何?」
「HellO!!やってみない?」
「またそれか。限定アイテムだか何だかだろ、どうせ」
「あ〜ん。バレた?」

千里はウィンクをし、体をくねくねと動かしている。これがセクシーなお姉様ならまだしも、男子高校生では萎えるばかりだ。それはそうと、千里が勧めていたのは今話題のゲームサイトHellO!!だ。このゲームサイトでは挨拶が重要らしいことと、会員数はギネス記録になったということしか凛は知らない。凛はHellO!!に入っていなかった。携帯ゲームサイトに興味が無いのもあるし、通信料だってかかるからだった。

「今どきHellO!!やってないなんて遅れてるぅ」
「別にいいじゃん」
「面白いぜ?ゲームいっぱいあるし」
「俺はゲームはPSP派なもんでね」
「いけずぅ〜!」

未だにクネクネと体を動かし続ける千里はさておき、凛は自分のメールボックスを開いた。新着メールが一件かある。“家族”のフォルダを開いてメールを見た。

『今日の特売、お兄ちゃんが行ってね』

「妹ちゃんからか?いいなぁ、お兄ちゃんとか呼ばれてんのかお前」
「勝手に見るな!」
「減るもんじゃあるまいし、いいだろ。別に」
「嫌だ、生理的に嫌だ」
「冷たい奴!」
「おーい、携帯しまえ。HR始めるわよ」

担任教師が入ってきたと同時に、朝のSHRが始まる鐘が校舎に響く。こうして彼の一日は始まるのだ。



株式会社HellO!!
それは、世界で一番稼いでいる携帯向けゲームサイトの運営会社だ。優秀なスタッフを抱え、二十四時間対応のカスタマーサービスも展開している会社。本社ビルは、日本国内にあった。社長室は、一番上のフロア丸ごと全部。人と会うことを極力避ける社長は、ここを自分の家としていた。

「集まったか?」
「今のところ、三人。もう何名か必要となってくるでしょう」
「早急に頼むぞ」
「かしこまりました、マスター」
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