T&B

□ストーカー編さん
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「リェナ、あれ・・・」

「え?」

休み時間、リェナと彼女の友人達は体育の授業のために移動中であった。
友人が指差す先には、蔵前英とブロンドの女の子がいる。
二人は仲良さげに一緒に歩いていた。
談笑し、時節カリーナに見せる笑顔は昨日の英と全く違う。
心から、楽しそうだ。

「あの子、カリーナ・ライルちゃんじゃない?」

「カリーナ・・・ちゃん」

「幼なじみだっけ、確か?」

「で、でもあの二人は付き合ってないんだよね?」

「リェナったら可愛い!
そうよぉ、堅物な蔵前君もリェナならきっと大丈夫だって!」

早く体育館に行こう、と急かす友人に背を押されてリェナはその場から離れる。
体育の授業の内容はバスケットボールだ。
試合がないときは、床に座ってみんなを応援する。
リェナは進んでいく試合を眺めながらずっと考えていた。
英と、彼の横にいたカリーナ・ライルのことだった。
英君は私の王子様なのに、とリェナは体育館の床に爪を立てる。
形の良い爪は、ワックスの塗装を剥いで白い線を浮かび上がらせた。

(邪魔な物は取り除かなくちゃ、そうよ)

いつだってそうしてきたのだから。





放課後、カリーナは玄関に向かっていた。
朝の憂鬱だった気分は一転し、凄く晴れやかな気分だ。
英と(喧嘩していたわけではないけど)仲直りしたのもある。
だが、一番の理由は英のカリーナへの言葉だ。
あれを頭の中で再生する度に、鼓動が早くなる。
誰かに伝えなければ、このままだと心臓が破裂しそうだ。
学校の友人には、まだ話せない。
カリーナの頭の中には、ヒーロー仲間であるネイサンが思い浮かんでいた。
何かと気にかけてくれているし、昨日は少し八つ当たりしてしまったからお詫びも兼ねて話そう。
そんな風に考えながらカリーナが職員室の前を通ったところで、一人の教師が彼女を呼び止めた。

「何ですか?」

呼び止めたのは数学の教科担任だった。

「課題はちゃんと持ってるか?休み明けには確認テストがある。
今日みたいにテキスト忘れたら悲惨だぞ。」

カリーナは急いで鞄の中を漁る。
昨日は例の一件があったせいもあり、テキストのほとんどを学校に置き忘れたのだ。
おかげで、予習を忘れた数学は悲惨なものだった。

「あ、無い・・・」

「持って帰って、しっかりやれよ。」

「はい。」

仕方ない、教室に戻るか。
階段を登るのは手間だが、明日悲惨な思いをしなければそっちの方がいい。
ヒーロー業と学業、どちらも大切にすると決めたからにはしっかりしないと。
階段を上がると、上の踊り場には夕陽をバックにして見たくない人物、リェナがいた。

(平常心、平常心!)

カリーナは鞄を胸でギュッと抱えると、足早にそこを通り過ぎようと試みる。
あと一段、というところでリェナの唇が動いた。

「あなた、邪魔なのよ」


―英君は私の王子様なんだから、邪魔しないでよね―



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