T&B
□ストーカー編ろく
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「ネクスト、俺が?」
「当たり前よ。何言っているの英君。それよりも私気になっていたんだけど、英君の能力って何?まぁ、これを外せない時点でパワー系とかではなさそうだよね。」
「嘘だ、俺はネクストじゃない!」
「・・・さっき言ったよね“逆も出来る”って。ショッピングモールで会った時、私はネクスト能力を発動していたのよ。ネクストじゃなければ、私にぶつかっても気づかない。だけどあなたは気付いた。やっと見つけたのよ、私を見つけられる“王子様”」
うっとりと、恍惚とした表情で話すリェナを見て戦慄が走る。
同時に、頭がくらくらした。
いきなり目の前に突きつけられた自分はネクストだという事実。
別にネクストを差別しているわけではないが、自分が普通じゃないと知って動揺した。
「折角の私の王子様だもの。英君は顔が綺麗な方で良かった。英君て日本人なんでしょう?アジア系は幼く見えるって聞いたことあるけどそうみたいね。こんなに身体はしっかりしているのに。」
ツツ、と指で鳩尾からヘソの辺りまで指でなぞられる。
全身が粟立つ感覚が、英の中を駆け巡った。
これ自分犯されるんじゃないの、と考えてしまう。
初めてだってまだなんだから美味しく食べられてたまるか!
(これ本当に、誰か・・・)
―――助けてくれ!
「おい、大丈夫か?」
「これが大丈夫に見えるなら、アンタは医者にかかった方がいいわ。」
ジャスティスタワー内ヒーロー専用ジム。
カリーナはただ自分の携帯を握りしめていた。
英から着信があった時はすぐに分かるように着信音も変えてある。
英と連絡が付かなくなってから一夜明け、英の両親は警察に捜索願いを出した。
新聞に“男子高校生行方不明”と小さく見出しが乗っていた。
シュテルンビルトの治安は比較的悪い方だ。
ダウンタウン地区に行けば少しは平和になるが、メダイユ地区はお世辞にもそうは言えない。
だからこそ、ヒーローが生まれたという面もある。
とにかく、そんなシュテルンビルトなので行方不明、まして遊び盛りの高校生となればあまり珍しくないのだ。
「私も彼を見つけられなかったよ。すまない、実にすまない。」
「気にしないで、スカイハイ。」
「・・・やっぱり誘拐なのかな?」
ホァンの一言に、カリーナの表情が一層翳る。
しまったと気づくも遅く、誰の目から見ても彼女は沈んでいた。
「ったく・・・おい、ブルーローズ!」
「何よ。」
見かねた虎徹は、カリーナの頭に手を乗せてポンポンと撫でる。
カリーナがぽかんとしていると、虎徹は口を開いた。
「大丈夫、必ず見つかる!
そのための俺たちヒーローだろ!」
「え・・・」
「そうね、こんな可愛い子が襲われるなんて見てらんないわ!」
「ファイアーエンブレム」
「そうだな、俺もあいつとは仲良くしているわけだし。」
「皆で探せばきっと見つかる、必ず見つかる!」
「ロックバイソン、スカイハイ・・・」
「僕も僕も!」
「皆で探しましょう、ブルーローズさん!」
「市民を助けるのは、ヒーローの義務ですから。」
「ドラゴンキッド、折紙、バーナビー・・・」
カリーナは胸の前で手を握る。
何かが切れたように、カリーナの目から涙が溢れそうになる。
カリーナは慌ててそれを拭い、強気な笑顔を見せた。
「・・・皆、お願い!」
おう!
ヒーローズの頼もしい声が、トレーニングルーム内に響いた。