神を呪って死んでしまえ

□03:謀略の夜
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大きな和風建築のその屋敷には、子供の楽しそうな笑い声が響いていた。
門をくぐり、石畳の道を抜ければ、小さな池と見事に手入れされた松の木が見えてくる。
そこをもう少し奥に行くと、芝生が敷き詰められた広い空間がある。
甚兵衛姿の二人の子供が、そこで玉蹴りをして遊んでいた。
よく似た可愛い女の子と男の子であった。

「姉様、それ!」

「あ!飛ばしすぎだよ!」

男の子が蹴った玉の高さは、女の子の背を超えていた。
女の子を通り過ぎていった玉は芝生の上をコロコロと転がり、池の中に落ちてしまった。
慌てて駆け寄った女の子が手を伸ばすも、玉には届かない。
玉は池の真ん中で浮いていた。

「誰か呼んでこなくちゃ。」

「僕に任せてよ、姉様!」

池の水面が、不自然な揺らぎ方を見せた。
男の子が「おいでおいで」と手招きをすると、それに引き寄せられるように水面が動く。
玉は、女の子の手が届くところまで運ばれた。

「わぁすごいね!」

「そんなことないよ。」

「でも、私には出来ないから・・・」

「いいんだよ、姉様。僕たちは二人で一つなんだもん。
姉様が出来ないことは、僕がしてあげる。ずーっと一緒だよ。」

「うん、ありがとう!」





「なつめ・・・」

しおんは自分の声にハッと目を覚ました。
まだ覚醒していない頭は、一体今が何時で何故テーブルの上に突っ伏していたのか分からない。
だが、周りをキョロキョロと見回すと、カーテンから光が漏れていることに気がついた。
加えて、部屋に置いてあるデジタル時計を見ると、時刻は既に七時を回っている。
どうやら、昨晩考え事をしたまま眠ってしまったようだ。
夢を見ていたのだ、とても懐かしく、そして愛おしい日々の夢を。
しおんは椅子から立ち上がり、替えの下着とバスタオルを寝室から持ち出して風呂に向かった。
熱いシャワーを浴びれば、頭は完全に覚醒する。
濡れた髪の毛をバスタオルで乾かしながら、しおんはお湯を沸かした。
朝食を終えてから、ディルムットを呼ぼう。
それから、今日することを確認して、計画通りに進めば、彼女たちにとっての第一戦が始まる。
昨晩のアサシン脱落は、どうにも楽観視できない。
何か裏があるという確信があった。
だが、遠坂家当主が何を狙って見せつけたのかは、未だにしおんには分からなかった。






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