ネタ尽くし

□苺夜
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「また、単位が逃げた。」
「単位が逃げたんじゃなくて、あんたが見捨てたんでしょ。」

夏休みも半分過ぎた頃、大学学部事務所から全生徒に一斉配信されたメールを確認して、岸谷咲良は絶句した。いや、正しく言えばメールのリンク先に学生情報を入力して、その先にあった情報を見て絶句した。ここは大学のラウンジ。無線ラン環境がきちんと整っているここでは、自前のノートパソコンでネットに繋げることが出来る。ちなみに、彼女と彼女の友人の他にもラウンジにおり、そのうち数名も咲良と同じように絶句していた。

「まあ、必修落とさないだけ良かったじゃん。再履だよ?再履。」
「そりゃあそうだけどね。はあー、後期頑張らないとなあ。三年生になったらサークルと公務員試験で大変だし、講義多く登録するわけにはいかないし。二年で取り戻さなきゃ。」

咲良の友人、前田早苗(まえだ さなえ)はコンビニで買ったパックジュースにストローを突っ込んで啜っていた。ちなみに彼女はフル単である。同じように出席して勉強しているはずなのに、この差は一体何なのだろうか。元からの頭の出来か。たとえそうであっても、咲良にはそれだけでは済まされない。元が違うなら努力して追いつくしかない。彼女に、凜とした後ろ姿が美しい彼女に追いつくために。



「菊田ァ!報告書出来た?」
「はい、ここに。」
「上出来上出来。今日はこれで上がりましょうか。みんなお疲れ様!」

警視庁捜査一課姫川班。主任姫川玲子のその一言で、暗かった姫川班の顔が一気に明るくなった。
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