アホリズム
□蟻地獄
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休み時間。自席に座っていると、ガタガタと乱暴に前の席に腰かけた誰か。まぁ、見なくても誰だか分かるけど。
私は気にせず手元の本を読み続ける。
ていうか、座んな。其処はあんたの席じゃない。
「ねー」
こっち見ないで。そして、話しかけんな。
「ねー、さんちゃん」
名前で呼ばないでよ。馴れ馴れしい。
「ねー。無視ってヒドくない?」
五月蝿い。別にヒドくない。
「さんちゃん」
私の顎に添えられたそいつの手。
やだ、触んないで。
「こっち見てよ」
くいっと上げられた私の顔。自然と目に入る奴の顔。
ニヤニヤすんな。なんかやらしい。
「ねぇ、さんちゃん。顔真っ赤だよ」
『う、五月蝿い、ばか』
言われなくても分かってるし。
「あ、やっと喋った」
『〜〜っ!しゃ、喋りかけないでっていつも言ってんじゃん』
「てか、いつもその本読んでるよね。全然ページ進んでないし」
おまえのせいだろ。ていうか、人の話を聞け。
「そんな面白い?今度貸してよ」
『やだ』
あんたなんか
嫌いなんだからね、
蟻地獄
(嫌いなあいつを)
(好きになってる私が)
(一番嫌い)
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